参入障壁という名の優しさ

参入障壁という名の優しさ

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参入障壁(barriers to entry)
ある業界に新規参入しようとする会社にとって、参入を妨げる障害のこと。
具体的な参入阻止要因としては、
(1)既存企業が備える優位性(規模の経済性、ブランド力、技術力、スイッチング・コストの高さなど)
(2)法規制など
が挙げられる。 一方、既存企業にとっては参入障壁の高さが、新規参入の脅威を測る指標となる。
(出典:ビジネススクールが贈る経営情報誌 GLOBIS.JP)

最近になって、鍼灸院や整骨院の看板を見かける機会が増えました。
あるいは、異業種交流会で、これらの名刺を受け取る頻度が増えました。

鍼灸院や整骨院が増えている、ということなのでしょう。
詳しくはないので、間違っているかもしれません。
私が人から聞いた話…の記憶が正しければ、昔は整骨院や鍼灸院の資格を取るための学校の数が少なかったそうです。

資格を手に入れるための門戸が狭く、かなりの難関だったとのこと。

規制緩和により、こういった資格を取る為の学校が増えてきたため、鍼灸師や柔道整復師の資格が取りやすくなった…と言えます。

言い換えると、参入障壁が低くなったのです。

それでも、資格を取るのに3年間学校に通う必要があるのだそうです。
鍼灸師と柔道整復師の両方を持っている人は、最大で6年、という時間を掛けていることになります。
(3年間の間に両方の学校に通う人もいるらしいです)

こういった学校の卒業が資格認定の場合、ここでいう3年という時間の長さがそのまま参入障壁の高さとなります。

単純に、3年間学校に通わないと取れない資格であれば、新規参入する人も3年間という時間が必要になるからです。

参入障壁は以前と比べれば低く放っているけれど、依然として高い、ということになります。

一方。別の資格で考えてみるとどうでしょうか。
例えば司法書士。
平成27年度の司法書士試験は、出願者が21,754名。合格者は707名です。
合格率は、3.24%。

まずは、この合格率自体が、大きな参入障壁として立ちはだかっていると言えます。
とはいえ、私が司法書士試験に合格した平成13年度では、合格者623人、合格率2.7%。
この参入障壁の高さも、徐々に低くなっているようです。

きちんと学校に通わないと資格が取れない、鍼灸師や柔道整復師。
そして、私見に合格さえすれば、時間の多寡は問われない司法書士。
両側面から比較した、「資格」という参入障壁の話でした。

では、これらの「資格」という参入障壁は、機能しているのでしょうか。

例えば、司法書士。
私が合格した平成13年の時点で、司法書士数は1万7075人。
一方、平成27年4月1日時点で、2万1658人。
この間、4583人増えました。
平成13年時点での司法書士数から26%増えていることになります。

この司法書士という資格は、日本国内でしか機能しません。
その日本の人口自体が、徐々に減っていく…ということになります。
市場が縮小しているにも関わらず、競合が増えているのです。

参入障壁自体は機能しているとは言えます。ですが、その参入障壁を超えた先で、多くの競合が犇(ひし)めいています。

その上、行政書士や弁護士など、取扱業務が似ている他士業で仕事を取り合うことになります。
司法書士の数という面で機能している参入障壁も、行政書士という、より安易な資格で司法書士業務の一部を行うことができています。
これで、参入障壁が機能しているといえるのでしょうか。

より顕著なのが、鍼灸師や柔道整復師。
資格のない人たちが、整体院やカイロプラティック、などという形で「似たような」サービスを展開しています。
広告規制の適用外ですので、広告宣伝もできます。
一方、正規の資格である、鍼灸師や柔道整復師は広告規制の適用を受けています。
その結果、資格のない人たちに仕事を奪われている現実があります。

実を守るはずの参入障壁のはずが、広告規制の関係で、かえって不利な立場に追い込まれているのです。

これらの共通する点。
それは「資格という国家の用意した制度に依存している」ということです。
国家資格という参入障壁の高さはあっても、実際にそれが機能していないのです。
機能…すなわち、参入済みの既存事業者が、新規事業者から身を守る壁になっていないのです。

だからこそ、資格などという国家の用意した枠組み「以外」で参入障壁を築く必要があります。

例えば、セールスコピーライター。
これは、資格も何もありません。セールスコピーライターになるのは簡単です。
今日にでもなろうと思えばなれます。
名刺にセールスコピーライターとでも書いて人に配って「私はセールスコピーライターです」と言えばいいだけの話です。

これのどこに参入障壁があるのでしょうか。

セールスコピーライターの場合、仕事の内容は「結果」です。
結果の出せないセールスコピーライターは淘汰されます。
結果の出せるセールスコピーライターになるには、3〜5年は必要です。

その3〜5年が、参入障壁になるのです。

資格のように「合格」や「学校卒業」さえすればいい、ということではありません。
セールスコピーライターになるための資格認定制度などありません。
今の時代は本やセミナーなどで学ぶことができます。
ですが、一昔前の凄腕コピーライター達は、本も何もない状態、文字通り暗中模索しながら、成果の出るコピーライティングの手法を体系化していったのです。
これがそのまま参入障壁となるのです。

参入障壁。
あるのであれば、その参入障壁でをきちんと活用しないともったいない話です。

冒頭の引用を一部ですが再掲します。

「既存企業にとっては参入障壁の高さが、新規参入の脅威を測る指標となる。」

つまり、新規参入を牽制できて初めて、参入障壁が機能しているのです。
自社の商品やサービスの持ち味、その背景や歴史の長さ、権威付けなど、様々な要因をアピールすることで、
「あそこには勝てないから参入は控えよう」
と思わせなければならないのです。

参入するときには邪魔でしかなかった壁。
それでも、越えた後は、あなたを守ってくれる優しい壁でもあるのです。

最後に。
先日の話と同じような話です。
「誰にでも」「すぐに効果が出る」
ネットの儲け話系は、参入障壁ゼロです。
そもそも、そんなうまい話だったら、なぜネットで宣伝するのでしょうか。
そんなうまい話が本当にあったら、それを隠して本当に大切な一部の人だけで独占するのではないでしょうか。

本当に
「誰にでも」「すぐに効果が出る」
ものであったとしても参入障壁が低すぎて、効果が出るまでに陳腐化して役に立たなくなるでしょう。
騙されないでください。

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