こんにちは。
アップスタッツ合同会社の代表，
経営軍師の飯山です。
今日は，
なかなか興味深い話を聞きましたので
ネタにします。
よく，
住職さんに
「お布施っていくらですか？」
と聞くと，
「お気持ちで…」
って返される，
という話は聞いたことがあるでしょう。
それがわからないから
尋ねているのに，です。
葬儀会社の記事とか
いくつか見て…
今回のように
「お布施はいくらなのか」
という記事タイトルなのに，
「お寺による」とばかりで」
具体的な金額が書いてない。
そんな記事が
検索に引っかかるのは
甚だ不愉快ですが。
今日は，
その件について
耳にしたので，
本人の許可を得てお伝えします。
なお，
お布施の話ですが，
お題は価格に対する考え方の話です。
最後までお付き合いください。
卑怯な返し技
ある方の話です。
仮にAさんとします。
親が逝去して相続したのですが…
古くから付き合いのあるお寺があります。
けれど
Aさんは，仏教徒ではなく
別の宗教を信じています。
なのに，
仏教の檀家としての立場を
引き継ぐのもおかしな話なので，
檀家を終了することにしました。
それに伴い，
仏壇を閉じなければなりません。
そこで，
そのための最後の供養をお願いしに
お寺に行った時の話です。
その住職さんが…
ものすごく…なんというか…
海千山千なお方だったのですが，
詳細はさておき。
まず世間話から始まり，
経緯（別の宗教だからという背景）を話して，
最後の供養をお願いしたのですが…
問題はここから
A「お布施はいくらですか？」
住職「お気持ちで結構です」
これは，
住職の中で決まっていることなのでしょうか。
まあ，Aさんも
そう言われると思っており…
A「いやまったくわからないので…」
住職「ご予算はどれくらいですか？」
Aさんも，予算を聞かれるとは
想定外だったそうで…
とっさに，
A「私は別の宗教なので，
仏教のことはまったくわからないのです」
この返しは素晴らしいですね。
Aさんが仏教のことはまったくわからないように
住職さんも，Aさんの宗教のことは
まったくわからないですから。
住職「だいたい３万か…少ない人で２万くらいですね」
…と，やっと金額が出てきました。
さて，
この話を聞いて…
マーケッターとして考えるなら，
仏教関係者の方は気を悪くするかもしれませんが，
はっきり言います。
「お気持ちで結構です」
というのは卑怯です。
値段は誰がどうやって決める？
では，
そもそも，値段とは
どのように決まるのでしょうか。
物販であれば，
原価に，販管費を乗せて
そこからどれくらい利益を乗せるか。
その利益幅は…
競合との兼ね合いで決まってくるでしょう。
そして，
ある程度，
価格はイメージが付きやすいものです。
では，
サービスの金額は
どれくらいなのか。
これは難しいですね。
原価そのものは
簡単には計算できません。
原価は無いとはいいません。
価値を生み出せるようなサービスを
提供できるまでに掛かった時間や労力が
原価とも言えます。
具体的には，
有名な逸話で，
ピカソに，絵描きだと知って
ナプキンを渡して
絵を描くように言ったら…
高額の請求を受けた。
理由は…
絵を実際に描くまでに掛かった時間は
数分でも…その絵を数分で掛けるように
なるまでに，何十年も掛かったからです。
例えば
治療家なら，
その治療技術を学んだ年数，
これまでに治療してきた年月の積み重ねが
治療の価値の原価と言えます。
でも，それを原価計算するのは
難しいですね。
だから…
「ウチはいくらです」
と，売る側が決めて明示しなくてはならないのです。
その金額を見て…
顧客側が，その治療家に
お願いするかしないかを決めることに
なります。
それを…
治療家が顧客に
「お気持ちで結構です」
と言ったらどうなるでしょうか。
上述の様々な計算事情を
顧客に判断させることになります。
これは…ものすごい負荷です。
ただでさえ，忙しないこの時代，
そこまで思考を働かせるのは大変です。
何よりも，
治療を受けに行って，
そんな思考の負荷を掛けられたら
たまったものではありません。
さて。
では，お布施の根拠は
どうなのでしょうか。
もちろん，
住職として必要な
知識経験スキルを修行した年数，
実際に住職として活動しながら
修行した年数。
そういったものも，
お布施に加算されるのかもしれないし
加算されないのかもしれません。
なぜなら，
宗教活動であり，
それは法人税も免除されるものだから
一般の経済原理をそのまま
適用していいかどうかもわかりません。
わからないからこそ，
「お気持ちで…」
というのは，
相手を疑心暗鬼にさせて，
「この金額じゃ失礼だから…」
と価格を釣り上げるやり方です。
多すぎたら…ボッタクリ
少なすぎたら…「この客はなんて失礼な」
なんてことになって…
どちらかが
不幸になるリスクがあります。
また，
「予算」
を尋ねてくるのも，
よくわかりません。
これも，
駆け引きのひとつなのでしょうけど。
仮に予算が
「１０万円です」
と言って…
実際に支払ったのは５万円だったら
どうなるのでしょうね。
こういう小細工，駆け引きが
不審感を呼び，
業界の不透明感を増長させるのです。
昔は，それでも
良かったのかもしれませんが。
そして…
今の時代もそのやり方で
実際に檀家を増やして，
お寺への来訪者が増えている，
信徒が増えているのであれば…
それはそれでOKです。
数字は，
価値の裏返しです。
金額以上に，
その仏教の教えがそこにあり，
人々の心の支えとなっていることに
ほかなりません。
ですが…
実際に，どうなのでしょうか。
「政府統計の総合窓口」
全国社寺教会等宗教団体・教師・信者数によると，
令和２年の仏教系信者数は，84835110人。
平成１６年の仏教系信者数は，93485017人。
１４年で，8,649,907人の信者が減っています。
まあ，信者数の合計が，
213,826,661人(令和2年)
なので…日本の人口を大きく
上回っていますから…
どこまで当てになるかどうかは
わかりませんが。
(重複する人が多いということでしょう)
それでも，
14年で，9.2％の信者数が
減っているのです。
その原因の一つに，
このような旧態依然で
卑怯なやり方による…
「業界の不透明感」
に対する反発なのかも
しれません。
もし…
本当に「お気持ちで…」と
言いたいのであれば，
松 ５万円
竹 ３万円
梅 ２万円ただし，やることはさほど変わりません。
どれを選ぶかはお気持ちでお願いします。
みたいなやり方のほうが
よほどわかりやすいのでは
ないでしょうか。
私だったら…？
もし，
私が
「お気持ちで」
と言われたらどうするでしょうか。
「では，所要時間及び移動時間に応じて，
愛知県の最低賃金分及び
お寺から，移動距離をガソリン代（レギュラー）で
計算してお支払いします」
と言うしかないですね。
なぜなら，
そのお寺ならではの価値を
一切明示せずに
「お気持ちで…」
としか言わないのですから。
なら…
１０円でも１００円でもいいのか，
ということになりますが。
それもどうかと思うので，
とりあえず，最低賃金相当額を
当てはめる，という考え方です。
これは文字通り，
「拘束する時間の対価」
でしかありません。
でも仕方ないですよね。
それ以外の価格の考え方を
明示するわけでもなく
価格を言うのでもないですから。
そのお寺の「儀式としての価値」を
金額算定する方法は持ち合わせていないのですから。
もし，
その分を
「対価」
と考えるなら，
そこを明示しましょう。
…という話でした。
最後に…余談。
仏壇を閉じたあとの，
仏壇の処分…お焚き上げ。
これについても，
「ウチの紹介なら安くできます」
とクロスセルを仕掛けてきたそうです。
本当に，海千山千な住職さんです。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
アップスタッツ合同会社 経営軍師 飯山陽平
追伸
素晴らしい住職さんの話はこちらをご覧ください。
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