数日前、夜にニュースを見ていた時のことです。
パリ同時多発テロ事件を受けて、ドイツがイスラム国に対して攻撃参加する旨の報道が流れていました。
非常に興味深く思ったのは、次の点です。
「ドイツはこれまで、「イスラム国」の掃討作戦への参加に、慎重な姿勢をとってきましたが、パリ同時多発テロを受けて政策を転換した形です。」
(テレビ東京ビジネスオンデマンドより)
これを聴いて、
「ああ、こうやって【敵が作られた】んだなぁ」
と実感しました。
単純ですが、重要なポイントは次の3つ。
(1)もともとドイツは、「イスラム国」掃討作戦に慎重だった。
(2)「イスラム国」がパリ同時多発テロを起こした。
(3)その方針を転換して、「イスラム国」掃討作戦に関与するようになった。
つまり、
「パリ同時多発テロ」が起きたからドイツは掃討作戦に関与するようになったのです。
「パリ同時多発テロ」が起きなければ、ドイツは掃討作戦への関与に消極的なままだったのです。
こうして…EU内でも有数の経済大国、ドイツが「イスラム国」に対して敵になったのです。
「敵」とは何なのでしょうか。
「戦い・競争・試合の相手。」(大辞泉)
「イスラム国」にとって、ドイツは相手ではなかったのです。
ですが、テロを起こしたがばかりに、わざわざドイツまで「相手」に回ったのです。
このブログは、マーケティング、コピーライティングの話が中心です。
政治のことを語りたいわけでもなければ、「戦争反対」といった博愛主義を解きたいわけではありません。
「自分の行動が何を意味するのか」
を解説するための、単なる例にすぎません。
先ほど、空港内を歩いていたら、若い男性が、ガツンとぶつかってきました。
故意ではないでしょう。
ですが、私はイラッとしました。
これまで、その男性に対して思うものは何もありませんでした。文字通り見ず知らずの赤の他人です。
ですが、彼の不注意によって、私は彼の敵になったかもしれないのです。
私はやりませんが、頭に「ヤ」の付く自由業の方は、ぶつかっただけで追い詰めて、「慰謝料」と称してお金を要求してくるようになるかもしれません。
「ヤ」の付く人はさておき、自分の行動によって、誰かを敵に回すこともありえるのです。
コピーライティングにおいて、簡単に共感を得る方法があります。
それは、「敵を作る」ことです。
敵を作ることによって、「自分は味方」のポジションを取ります。
通常、販売においては、売主と買主では、相対する存在です。
ある意味対立構造になります。
ですが、第三者として共通の敵を作ることによって、売主は買主の味方になる、という仕組みです。
有名な例としては、
「消費税セール」
5%が8%になった時は、これらのセールは禁止されましたので見かけませんでしたが、消費税導入時や、3%から5%に上がる時に、よく見かけました。
これは、消費税を敵に回すことによって、販売者側は顧客の味方、という構造にしたのです。
このことによって、どんな影響が出たのか、出なかったのかはわかりません。
消費税、という曖昧として具体的ではないものを捉えて敵に回したから、さほど影響は出なかったのではないかと思われます。
もし、特定の政府や、政党などを敵にしていたら、思わぬ事態になっていたかもしれません。
長野にある工務店があります。
その工務店は、集客のためにあるイベントを開催しました。
それは、「欠陥住宅見学会」です。
現に今建てている最中の家を案内して、これがこのように欠陥だ、という展示をしてみせたのです。
ここまでやる以上、この工務店は欠陥住宅を建てることはない、ということで非常に集客に効果的だったそうです。
もちろん、珍しいこともあって、マスコミも何社か来訪し、取材して報道もされたため、PR効果もありました。
これは「欠陥住宅」を敵にすることで、「ウチはきちんと建てるので安心して下さい」という味方のポジショニングを取ったのです。
その結果、どこが敵に回ったのでしょうか。
最初の話を思い出して下さい。
「イスラム国」が攻撃したのはパリです。フランスです。ドイツではありません。
それでも、ドイツが敵に回ったのです。
何かを敵に回すということは、他のどんな敵を作り出すのか、読み切れない、という危険があるのです。
先ほどの「欠陥住宅見学会」をやった結果、一番怒らせてはいけないところを敵に回したのです。
それは、役所です。
家を建てるときは「建築確認申請」という形で、役所に申請します。
その申請済みの物件について「欠陥住宅見学会」を行ったのです。
役所のメンツは丸つぶれです。
その結果。
この工務店に対して、役所は建築確認申請を通さなくなったそうです。
どれだけ、新築建物を受注しても、建築確認申請が通らなければ建てることはできません。
「欠陥住宅」そのものを敵にしたつもりでも、その奥の別の存在を敵に回したのです。
この工務店の社長曰く、「あの時はもう本当に大変だった…二度とやりたくない」と煤けた表情でぼやいていました。
この敵を作る手法の亜種として、「炎上マーケティング」なるものも出てきました。
ですが、敵を作ることには変わりありません。
どこでどんな敵を作るのか読みきれな危険性は変わらないのです。
敵を作る前に、もう一度。
「自分は何をしようとしているのか」
を省みる必要がありそうです。
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