7〜8年くらい前の頃の事だったかと思います。
私が「心の師」と仰ぐ、カリスマセラピストの石井裕之氏の話を聞いていた時のことです。
彼の話は、ある意味非常に辛辣で厳しく、別の取り方をすれば、とても優しさに溢れる話です。
その時の彼の話は、
「成功者から教えを受ければ成功できるのか」
ということについてでした。
成功者が20年掛けて成功したそのノウハウを凝縮したものをセミナーで話すとします。
その話を聞いてできるのでしょうか。
もちろん、行動しなければ成功するはずがありません。
当然行動するという前提になります。
成功者がその20年掛けて来た内容を凝縮したものを教わることに効果があるのか、ということです。
彼の考えでは「最低20年掛かる」ということです。
前提として、人間の能力は多かれ少なかれ大差ない、ということになります。
もちろん、事故で足を失った人と健常者では、「走る」能力において差は出ます。
そういった特殊事例を除けば、もちろん多少の誤差はあるにしても、それでも人の能力は概ね同じ、ということになります。
つまり、20年掛けてつちかった成功ノウハウを学んで実践したところで、20年が10年、5年、1年にはならない、ということです。
単純に20年掛って成功した人から学んで1年で成功した人がいれば、その人は、元の人とくらべて20倍優れている、ということになります。
そして、それだけの能力の差はない、という考えです。
だからこそ、20年掛けて学んできた成功法則を学んでも20年以上は掛かるのです。
さて、本題です。
今日は「成功事例」の話です。
先ほどの20年掛けて培ってきた成功法則。これももちろん成功事例です。
成功事例を学んでも、なかなか成功することはありません。
なぜでしょうか。
これが、先ほどの
「20年掛けて成功した人から教えを受けても成功するのに20年掛かる」
本当の理由です。
それは、「失敗事例を学んでいない」ことにあります。
人は、成功から学ぶことも多いですが、それ以上に失敗から学ぶことも多いものです。
20年掛けて成功した人は、成功したその立場や知識経験にもとづいて、
「成功事例」
を凝縮して、セミナーで教えます。
それは、「20年経ったその成功した人」にとっては成功法則なのかもしれません。
ですが、これから成功しようとしている人にとっては、それが効果があるかどうかわからないのです。
本当にその人の立場からみたら役に立つであろう情報も、成功者の立場からみたら、
「失敗事例として割愛」
されてしまっているのかもしれません。
その割愛されてしまった、そこに一番学ぶべきことがあるかもしれないのに、です。
そして、成功者は20年掛けて成功した中で、
「何が成功の直接的要因か」
を正確に特定できてはいないのです。
有名な例を紹介します。
「思考は現実化する」で有名な、成功哲学の祖、ナポレオン・ヒル。
彼は、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーから500人以上の人の紹介を受けてインタビューし、経過を追い続けました。20年掛けて、その500人以上の人全てが成功した、と言われています。
そして、ナポレオン・ヒルが彼らをインタビューしてその成功哲学を体系化して、「思考は現実化する」を出版するまでに、20年掛った、と言われています。
つまり、成功法則を体系化するのに20年掛かっているのです。
元の話の成功者の話に置き換えるならば、単純に成功するだけで20年掛かりました。
その20年掛った成功哲学を体系化するのに20年掛かる、ということになります。
成功した後に、それを凝縮してセミナーで…などといっても、その内容は正しいとは言えないのです。
割愛されてしまった部分を自分で見つけてそこから学ばないと、効果はないのです。
具体的には、成功事例にもとづいて、成功事例そのままに実践しても、失敗します。
例えば、ジョイントベンチャーという手法において、ある取引をまとめようとしていたとします。
「このようにすることでジョイント・ベンチャーが成立して収益を上げることが出来た」
という成功事例…結果があります。
では、その成功事例にたどり着くまでに、何回試行錯誤したのでしょうか。
5回は失敗したかもしれません。
10回は失敗したかもしれないのです。
それらの部分に目を向けずに、上手く行ったその表層だけを読んで理解して実践しても、うまくいくとは限らないのです。
成功事例を学ぶならば、その上手く行った手法そのものに目を向けていてもしかたがないのです。
なぜ、その手法で上手く行ったのか、その本当の原因。その原因にたどり着くまでに行った試行錯誤、失敗の数々まで学ぶことができて、はじめて成功事例は役に立つのです。
難しいコンセプトを学ぶときは、例を出すことで理解を促進します。
実際、私自身も例があるとわかりやすく感じます。そして私がセミナーで話す時も、例を多用します。
ですが、その事例の枠組だけを学んでいても仕方がありません。
そして、成功事例の結果だけを学んでいても仕方がないのです。
成功事例にたどり着いた背景にどれだけ迫れるか。
そこに学びと、その学びの先に望む結果があるのです。
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