クロネコヤマトの配達員と、ちょっとした雑談をしました。
なかなか興味深い話でした。
ご存じの方も多いかもしれませんが、クロネコヤマトでは、クロネコメール便を廃止。
4月より事業所向けに、クロネコDM便にリニューアルしました。
その根底にあるのは、規制の問題です。
前提として、メール便に「信書」を送ってしまうという問題が多発していました。
そもそも「信書とはなにか」ということが非常にわかりづらいのも大きな問題です。
信書を送るためには、信書を扱う旨の許可を受けなければいけません。
クロネコヤマトでは、その許可を受けられなかったことにあります。
…というのも、許可、すなわち一般信書便取扱事業と呼びますが、その許可要件が実に厳しい。
全国にポストを10万箇所以上設置する、ということになっているのです。
このような規制があるかぎりは、なかなか許可を受けられず、顧客も便利だからついよくわからないままに請求書などの信書をメール便で送ってしまい、法令違反となってしまう事態になったのです。
そのような違法状況を食い止めるために、メール便を廃止という手段になったのです。
さて、今日クロネコヤマトにこのDM便の状況を聞いてみました。
「かなり数が減った」
とのことです。
配達員いわく、
「それだけある意味ノーチェックでこれまで集荷してしまっていたんでしょうね」
と苦笑。
こちらとしても信書ではなく、単なるDMを送るのに、一般郵便では高く付いてしまって困ったので、DM便という形で制度を維持してもらえて助かりました。
…きっと、個人でネットオークション等を活用して古本を販売しているような人は、非常に困っているでしょうけど。
今日のタイトル、「やってはいけない努力」とは何なのでしょうか。
クロネコヤマト側では、国に対して規制緩和をするように水面下でかなり交渉を続けてきたとのこと。
「総務省は12日、一般信書便の新規参入規制を維持する方針を決めた。同事業への民間企業の参入要件はすでに十分明確であり、見直しは不要と判断した。ヤマトホールディングスが信書便の定義見直しを求めてきたが、周知活動を進めることで対応する。規制緩和は電報サービスなど特定信書便の一部に限定する。」
(2014年3月12日 日経電子版より)
それでも、規制緩和が見られなかったので、メール便廃止という強行手段に出たということでしょう。
「やってはいけない努力」
それは、変えられないものを変えようとすることです。
努力しつづければいつか変わるかもしれません。でも、変わらないかもしれません。
いわゆる「ライフワーク」だったり、信念や使命、ミッションやビジョンなど、収益や事業とは直接的に関わってはいない動機で努力するということであれば、話は別です。
けれど、事業者として収益を上げていくには、
「変わらないものを変えようとする」
のは、「無駄な努力」ではなく「費用対効果の悪い努力」です。
国や政府、制度に対して様々な不平不満はあるでしょう。
不平等だと感じることもあるでしょう。
当たり前です。
どれだけ清廉潔白な人が国や自治体のトップに立ったとしても、その下には黒く染まっている人は必ず居ます。
その清廉潔白な人が改革をしようとしても、必ず抵抗を受けて、なかなかすぐには変わらないものです。
でも、そのような仕事は、その一部の高潔な人に任せておけばいいのです。
もちろん、任せっきりでいいかどうかはともかく。
制度を変えるのが目的ではありません。
その事業を営んでいくことに対して、はじめに何らかの事業理念を掲げたはずです。
その理念を実現する上でも収益を上げていかなければなりません。
変えることそのものは目的ではないのです。
ならば、変わらないものを変えようと努力するのは非効果的。
「現状のルールでもできること」
にリソースを注ぐのが賢明というものです。
クロネコヤマトでは、現状の制度でできることとして、
「メール便を廃止」
「DM便を開始」
という選択をしたのです。
これが正しい努力というべきでしょう。
変わらないものを変えようとするよりも、変えなくてもできることはたくさんあるはずです。