出典を忘れてしまったのですが,
「言葉を知れば知るほど,伝えたいことを正確に伝えられるようになる」
といった話を聴いたことがあります。
この話を耳にしてから,日常会話でたまに振り返ってみるのですが,
「あ,伝えたい事が伝わってないな」
と,しみじみ実感する頻度が激増しました。
特に,
「間違って伝わっている…というほどではないけれど,どうにも正確に伝わっていない」
「概ね伝わっている,という感じ」
という実感が増えるようになりました。
ひとえに,自分の語彙不足だとしみじみ実感します。
コピーライターとしては,まずいですので,もっと勉強しなければなりません。
それはさておき,今日はそんな
「言葉」
と,その言葉が示す意味について,いろいろ思考を展開した結果,個人的に,非常に興味深い言葉を1つ紹介します。
それが,外交問題等で出てくる,日本政府のコメント
「遺憾の意」
です。
アンサイクロペディアなどでは,面白おかしく伝えられているこの言葉。
本来の意味は何でしょうか。
定義【遺憾】(明鏡国語辞典)
思い通りにならなくて,心残りなこと。残念。
(表現)自分側の行為を詫びる場合にも,相手を避難する場合にも使う。
今日は手抜きせずに,私の一番好きな国語辞典である,明鏡国語辞典からの引用です。
優れた辞書というものは,その定義のわかりやすさはもちろんのこと,その言葉の「使い方」まできちんと解説してあります。
言葉は,使うものですので,意味が理解できるだけではなく,使い方まで書いてあればこそ,それを精確に理解して自分の「語彙」として蓄積することができます。
明鏡国語辞典は,この「言葉の使い方」の解説が優れていますので,とても使い勝手のいい辞書です。
オンライン辞書にはないので,調べてそのままコピペしてブログに掲載できないのが,残念です。
話を戻します。
意味合いとしては,もともと謝罪や糾弾,要求の意図は含まれていません。
ですが,「遺憾の意」を使うことで,
「されるべきでないことをされたことに対して,残念だ,と伝える」
という,非常に曖昧なニュアンスで,婉曲的に非難の意図を伝えていることになります。
とはいえ,言葉を文字通り解釈すると,
「残念だ」
という意味でしかないので,
「遺憾の意」
を使われた相手側も,リアクションしにくいものです。
要するに,「遺憾の意」とは,
「特定の出来事に対して,不服である旨の意図を明確に打ち出し,その相手方にも不本意さを伝えるものの,それだけである」
というものです。
では,そんな毒にも薬にもならない談話やコメントに対して,どんな意味があるのか。
一部の人は,
「どうせ【遺憾の意】で終わるんでしょ」
と思っていたり,そのように言う人はいます。
ですが,もちろんそれだけではありません。
まずは,何らかの不本意な結果に対して「不本意である」旨を表明する。
これは大切です。
それ以上に,このコメントにどんな隠された意図があるのでしょうか。
日本人の(褒め言葉として)変態じみたスペックがあります。
有名な逸話が,種子島の鉄砲伝来。
ポルトガル人が,当時の日本に,鉄砲を2丁売却。
今で言うところの,1丁5000万円だったそうですので,鉄砲2丁,1億円です。
それに味をしめたポルトガル人が,翌年,鉄砲を輸出しようと大量に持ち込んだのですが,ちっとも売れなかったのだそうです。
理由は一つ。
もとの鉄砲を改良して,さらに性能がアップしたものが,大量に出回っていたからです。
見たことも聞いたこともない,そんな道具が,当時の技術で,たった1年で改良版が大量生産されている,という事実。
その後,織田信長が勝利を収めた長篠の戦い(1575年)では,銃が3000丁使われたといいます。
関ヶ原の戦いでは,5万丁の鉄砲が使われたのだとか。
ちなみに,長篠の戦いで行われた三列交代式鉄砲連射(3列に分けて配置し,1発目を撃つと、すぐに引き下がって2列目のものが撃つ。同様に3列目のものが撃つとことによって、間をあけずに鉄砲を連射する)という戦術が行われました。
銃の本場であるヨーロッパで,この三列交代式鉄砲連射の戦術が取られたのが,第一次世界大戦(1917年)だと言われています。
その差は,342年。
幸か不幸か,豊臣秀吉の時代に,銃は規制されたため,それ以上発展することはありませんでした。
ですが,豊臣秀吉が銃を規制することなく,そのまま大量生産を続けていたら…
15世紀に,スペインがインカ文明を滅ぼした時に使われたのが,鉄砲約150丁だと言われています。
すでに,その改良版が,日本国内に何十倍とあったわけですから…西欧諸国を侵略することだってできたわけです。
別の例を出すと…第二次世界大戦。
日本と戦ったイギリスの,戦前戦後のビフォーアフターなどについては…炎上しても困るので,深くは掘り下げません。興味がある方は調べてみてください。
1945年。世界で唯一,核兵器が使用され,空襲で焼け野原になった日本。
国としての存続すら危うかった状況から23年後,なぜか世界2位の経済大国へ。
近年の事例では。2010年9月の尖閣諸島沖で起きた,チャイナ漁船衝突事件により,日本とチャイナとの関係が悪化。チャイナは日本に対してレアアースの輸出規制という経済戦争の戦線布告。
当時は,世界の需要の90%程度を,出荷していたチャイナのレアアース。
※定義【中国】(広辞苑)
(1)国の中央の部分。天子の都のある地方。
(2)世界の中央に位置する国。自分の国を誇っていう語。
(3)もと,山陽道の特称。後世は山陽・参院両道の総称。
(4)律令例で,
(ア)京畿からの距離が近国と遠国との中間にある国々の称
(イ)面積・人口などに酔って国を大・上・中・下の4等級に分けたものの一つ。安房・若狭・薩摩など。
(5)中国地方の略。
とあります。つまり,チャイナを「中国」と表現するのは,言葉の意味としては誤用です。特に,チャイナを中国ということで,チャイナを世界の中央,という意味合いになるのは業腹です。今回は「チャイナ」と表現することにします。
その後どうなったのか。
チャイナ産レアアースの価格は数十パーセント下落。過剰生産と過剰在庫により,レアアース業界は衰退。
ある統計データによれば,300社あったレアアース企業が,20社にまで減ったとのこと。
別のデータによれば,レアアース関連企業の25%が操業停止に追い込まれたり,稼働率がが3〜4割程度で,赤字垂れ流しの状況になった,とも言われています。
本来,レアアースの輸出規制で,日本を苦しめようとしたはずが,日本は,レアアースを使わない製品開発や,レアアースのリサイクル技術を確立。
オーストラリアなどから輸入ルートを確立。
チャイナは,レアアースによる経済戦争をふっかけて,返り討ちとなったわけです。
長々と説明してきました。
この「遺憾の意」の背景にある本当の意味。
それは,
「『遺憾の意』と言っている間にやめてね。でないと,日本人が本気でキレるからね」
ということなのでしょう。
本当かどうかは知りませんが,一部海外では,日本人は本気で怒らせるな,とも言われているようです。
このような背景を元に,非常に長々と説明してきた内容。
それを一言で凝縮すると,
「遺憾の意」
となるわけです。
この,言葉の奥に膨大な意味を凝縮する,日本語の奥深さ。
この言葉の性能を,まだまだ活かしきれていない,と実感します。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
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