童話なのか,単なる昔話なのか。
そういったカテゴリ分けは詳しくないので適当に流します。
「舌切り雀」
の話です。
どんな話かは適当に検索してもらうとして。
雀が親切なおじいさんに大きなつづらと小さなつづらどちらか1つをあげる,という話でした。
おじいさんは,もう年だし自分に見合った大きさとして,小さなつづらを持って帰ったところ。
欲張りばあさんがそれを見て激怒。
なぜ大きなつづらを持って帰ってこなかったのだろうか…ということで,今度は欲張りばあさんが雀の元へ出向き…大きなつづらを要求。
中には化け物が入っていた…そんな話だったと思います。
なぜ謙虚で人のいい優しいおじいさんの配偶者が,こんなばあさんなのか。
このストーリー最大の謎です…が,本題から外れるので省略します。
さて。
今日は求人広告の話です。
私は日頃「集客」に関する話ばかりしています。
とはいえ,多少違いはあれど,「集客」も「求人」も人を集めることに関しては一緒です。
コピーライティングやマーケティングにおける原理原則はいくらでも応用が利きます。
それを踏まえて。
ちょっと想像してみてください。
よくある求人広告です。
「年齢・性別・経験不問。やる気のある方のご応募お待ちしています」
実に怪しいです。
見る度に,実に怪しいと実感します。
この1行がどれだけ怪しいのかを,次の通り簡単に実証してみましょう。
仮に,「求人募集」ではなく「恋人募集」だったとして,読み替えてください。
「年齢・性別・不問。やる気のある方のご応募お待ちしています」
↓
「年齢・性別・経験不問。私を好きになってくれる人を募集しています」
と言っているようなものです。
実に怪しいです。
…さすが,恋人募集で「性別不問」という点はさておき。
※現行の労働法制では一部の例外を除いて,求人に性別を条件として付けることが許されません。
「性別不問」は当たり前です。
ちょっと想像してみてください。
ある女性がいます。別のある男性に思いを寄せています。
思い切って聞いてみました。
「どんな人が好みですか?」
すると男性は,
「年齢経験不問。誰でも好きになってくれる人ならいいよ」
との回答。
これでは100年の恋も醒めるというものです。
一言で言えば,
「だれでもいい」
ということになります。
つまり,女性からしてみれば,
「誰でもいいってことは,あなたでもいいや」
ということになり…そんな人と恋人関係になるということは,自尊心に致命的なダメージを受ける可能性があります。
このように,ちょっとリアルな恋愛になぞらえて見ると,この求人広告がいかに怪しく,うさんくさく,誠実さに欠けるものであるかはご理解頂けるのではないでしょうか。
それにも関わらず,なんでこんな酷い求人広告が後を絶たないのか。
その原因を探るヒント,冒頭の舌切り雀にあります。
つまり,こんな求人広告を出すような経営者あるいは責任者は,この「欲張りばあさん」と同じということです。
「とりあえず一人でもたくさんの人から応募してもらい,一番いい人を採用したい」
これが本音でしょう。
欲張りばあさんの性根と何ひとつ変わるものはありません。
どんな人に来て欲しいのか,どんな活躍をして欲しいのか。
そして,その会社で働くことで,どんな価値を提供できるのか。
そういった点に触れることなく,自分ことばかりを考えている…そんな求人広告なのです。
恋愛に置き換えるだけだと…人によっては分かりづらいかもしれません。
普通の取引にしてみましょう。
扱っているものが,パソコンだとします。
非常に低スペックで,パソコンを初めて使うエントリーモデルとしてでしか使いようがありません。
そんなパソコンです。
私だったら,タダでもいらないしろものです。
市場価値で考えて…3万円くらいでしょうか。5万円もしたらボッタクリでしょう。
そんなパソコンを売るとします。
「誰でもいいので,このパソコン買ってくれ。値段は要相談。カネがある人歓迎」
いくらぼったくられるかわかったものではありません。
実に怪しいです。
最後に。
こんな欲張りばあさんかのような醜悪な求人広告を出す,その根底に何があるのでしょうか。
1つ目は,知識の欠如です。知らないことに恥を感じることはできません。旧約聖書の創世記で,「知恵の実」を食べてから,裸であることが恥ずかしくなった…という内容が端的に表しています。
2つ目は,思いやりの欠如です。今日のコンテンツは,いろいろ書きましたが,単に「その広告を見たときどう感じるか」を分かりやすく解説しただけです。求人応募者がこの求人要項を見て,どう思うだろうか…と,ほんの少しでも想像できれば,ここまで酷い広告にはなりません。独りよがりで,自分の事しか考えていない経営者の本質がここに表れています。
最後に。ビジョンや理念の欠如です。会社経営において,ビジョンや理念を実現しようと日々頑張っているのであれば,「誰でもいいからとりあえず来て」というようなことにはならないでしょう。このビジョンが定まっていないから,そのビジョンを体現するにふさわしい従業員像が定まっていないのです。
願わくば,このブログをご覧の方は,
「年齢・性別・経験不問」
などという求人を出していないことを切に願います。