先日,近所のスーパーに買い物に行ったときのこと。
某ドリンク剤の特設コーナーがありました。
「日頃頑張っているお父さんへ」
といったPOP付の特設コーナーで,ドリンク剤3本セットが綺麗にラッピング。
日頃頑張っている父親へ,父の日に
「リポビタ○D」
3本セットを贈る…ということは,
「もっと働け!」
という暗黙のメッセージになってしまうのではないでしょうか。
思わず苦笑するしかありませんでした。
ところが,ふと違和感を覚え,そのリポビ○ンDを手に取ってみました。
…今度は,苦笑ではなく思わず普通に吹き出してしまいました。
なぜなら,
「日頃頑張っているお父さんへ」
というメッセージの下に,リポ○タンDで隠れていた続きのメッセージに,このように書いてあったからです。
「愛情一本 チオビ○」
カメラを持っていかなかったのが悔やまれます。
さて,これが
「商品名の残酷な現実」
です。
スーパーという,販売店側…つまり,売上を伸ばそうとする側からして,
「○ポビタンD」
と
「チ○ビタ」
を混同しているのです。
これでは,最終的な消費者側にしてみたら…本当に区別がつかないことを意味しています。
いかに,顧客にとって,商品名や会社名が興味ないのかを端的に示す出来事です。
1年ほど前,あるマーケティングセミナーをした時のことです。
セミナーのオープニングで,とある動画を観てもらいました。
それは,LEDのCMです。
1分間もの時間を掛けてストーリー仕立てになった,感動的なCMです。
そのCMを見せてから,一切コメントせずに,しらっとセミナーを始めます。
その後,しばらく時間が経ってから,こんな質問をしてみました。
「さきほどの,LEDのCMの内容は覚えていますか?」
全員が覚えている,と挙手。
続いて,こんな質問をしました。
「では,あのLED,どの【メーカー】のCMか覚えていますか?」
正解率は20%でした。
つまり,1分間もの長いCM…つまり,通常の2倍から4倍ものコストを掛けて宣伝。
その結果,5分の1しかメーカー名を覚えてもらえなかったのです。
極端に言えば,10人中8人が,「LEDを買う時」に,他社のLED製品を買う,ということになるのです。
お金を払って,他社の宣伝をしているも同然なのです。
これが,商品名や,会社名に対する,ひとつの現実です。
どうすればいいのか…ということはさほど問題ではありません。
なぜなら,この残酷な現実を知ることが一番大切だからです。
売り手側として,どうしても自社製品にこだわってしまいます。
しかし,そのこだわりは,顧客にはカケラほども興味が無いのです。
世界ナンバーワンマーケティングコンサルタントのジェイ・エイブラハムは,この点について,痛烈に批判しています。
「卓越の戦略上級編」にて,
「ほとんどの人は、クライアントと恋に落ちるのではなく、自分の商品、もしくは会社と恋に落ちてしまう。
本質的には、あなたが高次元の動機や目的を持っているのであれば、あなたが経済的に豊かになろうと、そうでなかろうと、そんなことは、本来どうでもいいはずだ。」
そう,彼に言わせれば【どうでもいい】のです。
そして,彼ではなく,実際に顧客にとっても,あなたの商品名や会社名は,本当にどうでもいいのです。
それでもなお,あなたは
「自社の商品名」
をアピールしますか?
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