日経電子版の記事で、なかなか興味深い話を見かけました。
事例の概要は次のとおりです。
結果的に、この訴訟は
という形で終わりました。
具体的な金銭の額は今日の話に関係がないので省略します。
この記事の最後に書いてある、次の内容が今日のテーマです。
今回は訴訟ですので、弁護士もこのような言い回しをしたのでしょう。
ですが、本当に信じるのは新興宗教の教祖と信者だけでしょうか。
今回の「娘」は新興宗教の信者ではなかったのですが、実際に信じたからこそ、このような事態に発展したのではないでしょうか。
この娘が愚か、だとか、荒唐無稽だと思えるのでしょうか。
その背後にある考え方は、
「人は自分が信じたいものを信じる」
というメカニズムです。
有名な例では、
「1日15分聞き流すだけ」
と謳う、某英会話教材。
これは、効果が「無いことは証明できない」のです。
なぜなら、期限がないからです。
1日15分を30年聞き続ければ、英語が身につくかもしれません。
ですが、1日15分を30年続くでしょうか。
その前に飽きてやめてしまうのが関の山でしょう。
その場合、結果は次の2つ。
(1)効果があった
(2)効果が出る前にやめてしまった
結果として、効果が「ないことは証明できない」のです。
それでも、「〜だけ」という言葉の魔力に捕われます。
他の例としては、
「1日1本コレを飲むだけで〜」
などの、健康食品、あるいは健康補助食品などもあります。
具体的には、
「1日1本飲み続けるだけで血圧が下がる」
という感じでしょうか。
薬事法の関係で、
「血圧が気になる方には1日1本」
という…より悪質な表現になっているかもしれません。
なぜなら、この表現では
「1日1本飲むことでどうなるのか」
を一言も述べていないからです。
別の言い方をすると、このように【一部の特定の人】が、このように脳内補完します。
「血圧が気になる方には1日1本(飲むだけで血圧が下がる)」
このように、脳内に自分の都合のいいように補完する人と、冒頭の「がんが完治する」と信じた人と、どれだけ差があるのでしょうか。
それでも、この「〜だけ」というコピーは未だによく見かけます。
理由は単純です。
「効果があるから」
使われるのです。
人はそれだけ、自分に都合のいいことを信じたいのです。
別の言い方をすれば、都合の悪いことから目を逸らせたいのです。
血圧を下げるために、塩分摂取を抑えるなどのことをしたくないのです。
今までどおりの塩辛い食生活を送りながら血圧だけを下げたいのです。
※私は医師ではないので塩分の摂取を抑えることで血圧が下がるかどうかはわかりません。比喩的表現としてご理解下さい。
「聞くだけで頭が良くなる」
みたいな、そんな売り文句も未だに見かけます。
おそらく、この売り文句に惹かれる人は、そもそも「何を以って頭がいいのか」も明確になっていないのでしょう。
だから、このような売り文句に踊らされるのです。
では、こういった売り文句、コピーは顧客を騙しているのでしょうか。
もちろん騙してはいません。何一つ嘘はないですから。
冒頭の「がんはかならず治る」は、他の法令で問題になりそうですが、それは論点ではないので触れません。
しかし、嘘をついていなければいい、ということでもありません。
騙していなければそれでいいといい、ということでもありません。
顧客が
「騙された」
と思ったら、嘘をついていなくても、騙していなくても、問題になります。
クレームに鳴るのはもちろん、その顧客からの売上が無くなる上に、今の時代はSNSなどで悪評を広めることも簡単にできます。
ならば、どうすればいいのか。
それははじめの一歩として、割りきって「〜だけで」というコピーを使うことです。
例えば。
※例えなので、薬事法や医学的根拠は脇に置きます。
「血圧が気になる方は、1日1本これを飲むだけ」
というコピーで売ります。
その買った顧客に対し、
「1日1本30日続けてみていかがでしょうか。血圧に改善が見られたでしょうか。とはいえ、この1日1本を続けても、100%完全に正常血圧に戻れるとは限りません。
なぜなら〜」
などと言って、適切な療法を販売するのです。
ここでのポイントは、はじめに「1日1本だけ」があるということです。
最初から、本来の適切な療法を販売しても売れません。
なぜなら、その顧客は「〜だけ」の信者だからです。
実際に、「〜だけ」を体験して、改善は見られても本当にほしい結果は「〜だけ」では足りないということに直視させないと、売れないのです。
もちろん、
「〜だけ」のとりこにさせて、1日1本を3年も5年も売り続けるのも一つでしょう。
そしてある日突然「ダメじゃないか!」と顧客がキレるかもしれません。
どちらを選ぶのか。それは売手の判断となるのです。
今日のブログを読んで、少しでも
「参考になるな」
「役に立ちそうだな」
「読んでよかったな」
と思えることがあったら、ぜひあなたの友達にもお役に立ちたいので、Facebook「いいね」や「シェア」にご協力をお願い致します。