そのベネフィットは誰のため?

そのベネフィットは誰のため?

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5年ほど前のことです。
あるお気に入りのラーメン屋がありました。
あっさりしていて、かつコクがある塩ラーメンが旨い店です。

…ところが、このラーメン屋の向かいに、大盛りラーメンで有名なチェーン店ができました。
そこで、そのお気に入りのラーメン店でも、やたら大盛りのメニューが登場。

最高の大盛りは注文する勇気がなかったので…その一段階下の…それでもやたらとでかいラーメンを注文。

完食こそしましたが、翌日の昼すぎても、何も食べる気になれませんでした。

先日都内を歩いていても、
「大盛り無料」
「替え玉3玉まで無料」
といった売り文句を見かけます。

これらの店のベネフィットは…言うまでもありません。
大食いの人向けに、
「追加料金を払わなくても、腹いっぱい食べられて満足できます」
といったものでしょう。

あるいは、私が食べたものよりも更に大きな、一番の大盛りを完食すれば、
「征服感」
みたいな感情を味わえるのかもしれません。

では、これらのベネフィットは…食の細い女性には向いているのでしょうか。
ある意味、悪質ないじめになりかねません。

これが「誰のためのベネフィット」という、極めて基本的な考えです。

そのベネフィットはその特定のターゲットのためにならなければ、かえってデメリットになってしまい、かえって購入を避けられてしまう原因になります。

例えば。
パソコンの性能。
私はせっかちなので、パソコンの読み込みが遅いともどかしく思います。
そこで、パソコンの作動の早さに関わるCPUとメモリ搭載量を多くする傾向にあります。

一度に複数のソフトを立ち上げて、それぞれを参照したり切り替えたりしながら作業をするので、それなりの性能があると、快適に作業できます。

そんな私向けにはフルスペック型のパソコンはベネフィットになります。

一方。
これからパソコンデビューをしようとする人向けに、そんなフルスペックモデルは必要でしょうか。

特に、CPUとメモリは、そのまま価格に直結します。

不必要に高スペックになると、価格も上がってしまうのです。

「パソコンを買うのはこれが初めて。まずはメールとネット、できればワープロくらいは使えるようになりたい」
という人に、
「このパソコンの最高性能のCPUであれば、動画編集を快適に行うことができます」

と言われたらパソコンを全く知らない人であれば、
「なるほど、動画編集もできるくらいだから、ワープロも問題ない」
と思うかもしれません。

ですが、後から、CPUとメモリ数が価格に直結して、かつ、ワープロ程度であれば、それほどのものでなくても十分だと知ったら、
「もっと安いモデルでも十分だったのに」
と反感を買いかねないでしょう。

ベネフィットは、その特徴から連想するイメージの延長上にあるとは言い切れません。
例えば、アイスクリーム。
アイスクリームは、もちろん、夏の暑い時期に売れます。

だからこそ、「暑い時にはアイスクリーム」というイメージがあるかもしれません。

ですが、寒いはずの北海道の冬でもアイスはよく売れます。
なぜなら、北海道の寒冷地仕様の建物内は…暑いからです。

札幌在住の人が、関東に来て建物の中で寒くて震えている…というシーンを何度か見かけたことがあります。
「北海道の、密閉性の高い建物でストーブをつけまくる文化」を背景にすればこそ、アイスクリームのベネフィットは活きてくるのです。

これで、本州の人に
「寒い冬こそアイスクリーム」
と売り込んでも、あまりうれしくないでしょう。

ベネフィットは、その人向けだからこそ、ベネフィットになるのです。
コピーライティング、と書くと、ピントがずれてしまいかねません。
敢えて言うならば、「セールスレター」と表現すれば、よりわかりやすいでしょう。
レター、とは手紙です。

手紙を不特定多数の人に書くことはないでしょう。
「その人に向けて」
書くからこそ、手紙なのです。

誰のためのベネフィットなのか。
当たり前過ぎる基本ですが、もう一度考えてみてください。

 

 

 

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