先日、不動産の売買による名義変更手続きをした時のことです。
売主様の1人が、高齢で施設に入っており、売買決済の場に同席することが出来ません。
そんな場合の対処法として、事前にお会いして、本人確認と、「本当に不動産の売却をするということで間違いないか」という意思確認を行います。
その出来事です。
すでにかなりの高齢で、耳が遠くなっています。
大きな声で、確認事項を質問したところ、耳の遠さ故か、おぼつかないながらも回答いただきました。
しかし、
「◯◯町◯丁目の土地建物の売却ということで間違いないですか?」
と質問しても、沈黙。
さらに2回ほど同じ質問をしても、ぼんやり理解しかねるのか、戸惑った様子でした。
そこで、同席していた親族の方が、
「◯◯町◯丁目の土地建物を処分する、ってことでいいでしょ?」
と尋ねたところ、その高齢の方は、
「そうそう、それでお願いします」
とのこと。
無事、円滑に手続きを終えることが出来ました。
この出来事は、「反応」の可否を示唆しています。
この高齢者は、
「売却」
というキーワードだと反応できなかったのです。
「処分」
というキーワードだと反応できたのです。
「処分」
という言葉は、どちらかと言えば、私達のような「業者」側がよく使うだけに、想定していませんでした。
…ですが。
少し想像力をふくまらませて拡大解釈するならば。
現在の住所とは違う場所の物件。
ということは、昔住んでいた家なのでしょう。
そして、今は施設の中…。
「売る」
という行為は、当然お金が自分の手元に来る、ということになります。
90歳を何年も前に向かえ、専用の施設で一定期間お世話になっている中で、
「お金が自分の手元に来る」
というリアリティを感じることはないので、「売却」ではなく「処分」なのかもしれません。
想像はさておき。
ここに一つの学びがあります。
自分が当たり前のように使っている単語。
その単語で、反応したい相手に届くでしょうか。反応を引き出すことができるでしょうか。
例えば。
あくまでもなんとなくですが、私がかつて都内の大規模司法書士事務所で丁稚奉公していた頃のこと。
その時の事務所のトップの方は決して好きになれない人間性でした。
とはいえ、それでもまだ20代前半の私には大きな影響を受けました。
具体的には、肩書。
◯☓合同事務所の「代表」でした。
事務所のトップ、といえば、「代表」とつけることもできれば、「所長」とつけることも出来ます。
私自身が独立した時は、当然私1人しかおらず、かつ単純に私の個人名の事務所だったので、特に肩書はつけていませんでした。
ところが、ある人に「この地域の担当者ですか?」などと聞かれて、
「え?私個人名のついた事務所名を見れば、私がトップだってわかる…と思っていたけど、そうでない人もいるんだな」
と思って着けた肩書が、「代表」。
電話営業なので、
「所長いますか?」
と聞かれると…誰だっだっけ、と一瞬考えてしまいます。
FAXDMで、「〜事務所 所長様」宛で来ると、他所宛のものが間違ってきたのだろうか…と一瞬考えてしまいます。
これが、単語で反応を引き出せるかどうか、ということです。
電話ならともかく、チラシや広告など
「わざわざみることを想定されていない」
ものの場合、その一瞬に「私宛だな」と思わせられなければ、それでアウトです。
では、どうすればいいのか。
実際、その人が使っている言葉を探して、その言葉で呼びかけるというものです。
テレアポなら、一手間掛ければすぐにできます。
例えば、私宛にテレアポをしたい場合。
おそらく、どこからか名簿を調達してきて、掛けているのでしょう。ということは、事務所名と電話番号くらいはわかっているはず。
事務所名を検索すれば、事務所HPが見つかります。事務所HPがあるところであれば、
「事務所紹介」
というページが用意されていることがほとんどでしょう。
そこでの肩書を見れば、一発でわかります。
私の場合は、「〜事務所 代表」と書いてあります。
ならば、「代表はいらっしゃいますか?」で問題ありません。
けれど、一人の事務所で、代表も何もない…という方もいるでしょう。それもHPを見ればわかります。
その時には、「司法書士の▲▲先生、いらっしゃいますか」で済みます。
逆に、司法書士が1名ならば、ほとんどの場合「先生いらっしゃいますか」で済みます。
この、1回検索する、という一手間を掛けるかどうかで反応が変わってくることでしょう。
わかりやすくテレアポの話をしましたが、これがFAXDMや…他の広告でも役に立ちます。
特に、BtoCで不特定多数に届く媒体…例えば折込チラシや紙面広告などの場合でも、全員が全員に反応させたいということはないでしょう。
ならば、反応して欲しい人が「何と呼ばれているのか」をリサーチすればいいのです。
コピーライティングは、ライターの文才、文章力で書くものではありません。
リサーチで書くものです。
このひと手間の積み重ねが精度の高いコピーになるのです。
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