諸事情により,「都市銀」の口座が必要になって,某銀行に行ったときのことです。
今は,マネーロンダリング防止の為,口座開設はかなり厳しくなっています。
口座の使途とかを根掘り葉掘り訊かれました。
仮にも司法書士なので,そのへんは十分に理解しています。
まあ,しょうがないな,と思いながら答えていた,そんな時。
行員の女性から,こんな質問をされて,固まりました。
「(都市銀の口座が必要,という答えに対して)この近くには,◯銀行だったり□銀行だったりありますが,なぜ当行をお選びいただいたのですか?」
実はこの質問,マーケティングにおける鉄板の質問です。
「(競合他社)ではなく,当社を選んでいただいた理由はなんですか?」
この質問を掘り下げていくことで,他社にはない自社の強みが見つかる手がかりになる,というものです。
ですが,いざ自分が訊かれてみると,どうにもよくわかりません。
中小零細企業ならともかく,どれをとってもメガバンクです。
その中から,なぜその銀行を選んだのか。
正直,
「なんとなく」
と思うのですが,自分でも気になって,ぼーっと考えてみました。
行員の女性には大変失礼だったかもしれませんが,考える時の癖で,目が半開きの状態で,ぼーっとしてしまいます。
ですが,答えは出てきません。
目の前に写っているのは,質問して,答えを待っている行員の女性です。
そして…さらには,その女性行員の来ている服。
いわゆる制服です。
そのカラーを見て,
「あ,この色は,割りと好きかも」
という答えになりました。
ですが…それをそのまま答えるのはためらいがあります。
私みたいなおっさんが,
「◯銀行のカラーはいまいちだし,□銀行のカラーはむしろ嫌い。でも,この銀行のその色は割と好きなので」
と,若い女性に答えるのはためらいがあります。
仕方がないので,
「昔,業務用の屋号付き口座を,ここで持っていたので…」
と答えました。
すると,その行員はすぐに端末をいじって,記録を調べ始めました。
どうやら,この答えでOKだったようで,そのまま手続きが進んでいきました。
それから紆余曲折を経て,1時間半くらい掛かってようやく通帳を手に入れました。
さて,ここで問題です。
私はなぜこの銀行で口座を開設したのでしょうか。
また,銀行員の女性は,なぜ私がこの口座をここで開設したのか,理解したでしょうか。
理由としては,イメージカラーが割と好きな色だった。
競合のイメージカラーが,それほど好きではなかった。
これは一つあるでしょう。
では,行員の女性はこの理由を理解したのか。
私は,
「昔,業務用の屋号付き口座を,ここで持っていたので…」
と答えました。
これは,答えになっていない,ということに,あなたは気づいたでしょうか。
質問は,
「◯銀行でもなく,□銀行でもなく,この銀行で口座を開設したのはなぜか」
というもの。
「この近くに〜」というのは,ただの立地であり,一要因でしかありません。
立地が決め手になる場合もあるでしょうが,今回はすぐ近くに両方あったから…このような質問になったはずです。
ということは,
「昔使っていたから」
というのは,答えになっていないのです。
ならば,どうすればいいのでしょうか。
模範解答としては,行員は次のように尋ねるべきでしょう
「では,以前にご利用いただいたのは何故ですか?」
ここまで訊かなければならないのです。
一応付け加えるなら,その質問の前に,
「昔からご利用いただいていたのですね,ありがとうございます」
と言えれば,なお良し,ということになります。
これが,リサーチとしての質問の具体例でした。
顧客の中の真実はどこにあるのか。
それは,質問しなければわかりません。
そして,出てきた答えも,顧客自身がそれを真実だと気づいていないことも多々あるのです。
今回のように,「答えになっているようで,答えになっていない」質問は非常に多いのです。
例えば。
「どうして自己破産したのですか?」
という質問に対して,
「お金がなかったから」
というもの。確かにその通りですが,全く答えになっていません。
歯医者が,
「今日はどうされましたか?」
という質問に対して,
「歯が痛いです」
これも,その通り,というしかないでしょう。
それは答えになっているのか。
なっていないのであれば,さらに掘り下げる。
その積み重ねが,コピーライティングやマーケティングに必要な,リサーチの一つの方法となるのです。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
1つの集客法で7割以上を集客している。
これは危険です。
とはいえ,どうしていいかわからない。
そんな方は一度こちらをご覧ください。