数年前の話です。
私がまだ司法書士として過払い金請求をしていた時のこと。
依頼者が事務所を初めて訪れる際は,どうして良いかわからない状態で,破産は困るし…なんとか返済できないか…いう悲愴な思いだったのですが…
終わってみれば,債務がなくなってしかも,過払い金が戻ってくるわけです。
とても感謝される仕事でした。
ところが…時が流れ…
過熱なCM合戦により,過払い金は「戻ってきて当たり前」と思い込む人が増えてきました。
すると何が起きるのか。
「なんで私は過払い金が戻ってこないんですか」
という人が出てきます。
挙句の果てには,過払い金から報酬を差し引いて残りをお返しする,という報酬体系について説明した上で,
「報酬について,説明を受けて理解し,納得しましたので依頼します」
と一筆書かせたのに,
「なんで帰ってきた過払い金が全額振り込まれないだよ,訴えるぞ」
「報酬を差し引くなんて聴いていない。明日には弁護士から連絡させるから首を洗って待ってろ」
と恫喝する依頼者まで発生。
どれだけ報酬をもらっても,こんな仕事はしたくない…と思って,ある時を境に,一切の過払い金返還請求の手続きは受けないことにしました。
今でもたまに思い出します。
「あの時,どうすればよかったんだろうか…」
強欲な依頼者から依頼を受けなければよかったのか。
一筆書かせたからよかった,と安心してしまったのがまずかったのか。
未だに答えは出ません。
ただ,これは過払い金という,ある意味イレギュラーな話なので,人の心の中の醜さが拡大してしまう傾向にあるのかもしれません。
人は,正当な対価を払って受け取るものよりも,濡れ手に粟で,何ら対価を払わずにもらえるものに,欲張る傾向があるのかもしれません。
(過払い金は,はじめはその金利を払います,という合意をしているので,本来戻ってこないはずの金利です)
過払い金についての法的な話,いかに法の道理から外れたことなのか,については脇に置きます。
ただ,多くのビジネスにおいて,顧客がモンスターになる瞬間があるのです。
それは,
「不相応な価値を受けた時」
です。具体的には,初めから提供するサービス以上のサービスを提供した時に,起こり得るのです。
例えば,ある整体師が60分5000円で施術をしているとします。
ある患者がその整体院を訪れ,施術を受けます。
整体師が,
「いや〜ひどい状態ですね〜」
といって,5000円もらって,70分施術をします。
「ひどい状態だったので,少し多めに施術しておきました」
と言ったとします。
その患者が,2回,3回と通う度に,60分5000円の料金を払って,70分の施術を受け続けます。
そして…ある時その患者が,5000円払ったところ,施術が60分で終わったらどうなるでしょうか。
その患者は「なんで今日は60分【しか】施術してくれないのか」と不満に思う可能性がある,ということです。
下手をすると,その患者は,その整体師について有る事無い事なんでも,ネットに悪評をばらまくかもしれません。
なぜこのようになるのでしょうか。
これは,返報性の法則の逆作用だと思われます。
人は,誰かから親切にされると,それを返したくなる,という心理が働きます。
これが…一方的に親切にされ続けて,それを返す機会がまったくなかったとしたら,どうなるでしょうか。
その相手に負い目を感じるのではないでしょうか。
負い目を感じる,ということは,自分が悪い,ということになります。
ですが,人は「正しく在りたい」という衝動を持っています。
ということは,自分が正しく,誰かが悪い,ということにしなければなりません。
結果的に,相手が悪い,ということにしてしまいます。
この例の場合,整体師が悪いことにしないといけないので,
「5000円もらって60分の施術をした」
ことに対して,
「60分しかしなかった」
と責められることになるのです。
返報性の法則の逆作用というのは私の仮説です。
本当かどうかはわかりません。
ただ,言えることは,
「特別のサービスを【当たり前】だと思われた時に,その顧客はモンスターになる」
ということです。
理不尽なクレームを受けることに成ります。
ではどうすれば良いのか。
特別のサービスをする前に,
「今回は特別です。次回はありません」
とはっきり言えば良いのです。
具体的には,料金表に出ていないけれど,顧客のためにやっていることを,きちんと顧客に伝えなければならないのです。
それをやらないと,【当たり前】だと思われます。
逆に…顧客のためにどれだけのことをやっているのか,きちんと伝えれば,
「価格以上の価値」
を感じてもらいやすくなります。
これを繰り返していくことで…値上げをしやすくなるのです。
値上げをするかどうかはさておき,顧客に価値を伝える。これは徹底して行って下さい。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
追伸
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