たまたまですが,ネットで
「うわ…感じ悪い広告だな」
と,しみじみ感じたものがあります。
見た瞬間,心がざわつく感じです。
今日は盛大なブーメラン覚悟で,この感じ悪い広告について掘り下げていきます。
内容は,整骨院のもの。
「交通事故治療なら当院におまかせ下さい」
といった内容です。
オレンジと黄色系統の,けばけばしい色合いの上に,ご丁寧に事故った様子をデフォルメしたイラストまで書いてあります。
さて,不幸にも事故に遭った時に,この整骨院に行きたいと思えるでしょうか。
おそらく,この広告を作った人は,本当に事故に遭ったことがないのでしょう。
でないと…人として,ここまで無神経な真似はできません。
私は学生時代に,自転車に乗っていて,車にはねられたことが一度。
あとは,雪道で滑って自損事故が二度。
幸い大怪我ではありませんでしたが,経験はしていいます。
車にぶつかった瞬間の,時間がゆっくり動く感覚。
自分が中に投げ出されて体が回転し…青い空が見える感覚。
地面に叩きつけられた時の,衝撃。
あれから20年位経ちますが,今もよく覚えています。
あるいは…雪道で事故った時の…車が制御不能に陥り,自分の意図とはかけ離れた動きに振り回される感覚。
全身から血の気が引いて,鳥肌が経つ感覚。
吹雪く中,車が回転し,橋げたに突っ込んだ瞬間。
マイナス12度の中で,川に落ちたらご臨終でしょう。
そんな感覚を体験した事があるならば,
「目立ってなんぼ」
とばかりに,けばけばしく,しかもデフォルメされた交通事故のイラストまで載せるような広告は…とても出せるものではありません。
マーケティング担当者として以前に,人間として何かが終わっています。
単に被害者としての意識かもしれません。
ただ,いかにも「人の不幸…事故が起きるのを歓迎」しているかのようにすら感じてしまいます。
何が問題なのでしょうか。
私も,整骨院の先生と何人か知り合いがいます。
いろいろ話を聴き,教えていただきました。
やはり,
「交通事故の患者はオイシイ」
ようです。
普通の保険診療よりも,ずっと収益が見込める患者なのだとか。
つまり,オイシイ患者だからこそ,けばい広告を出して,どんどん集客活動をする。
患者の感情を置き去りにして,利益率の高いターゲットだけに狙いを定める。
そこに,人としての心はあるのでしょうか。
事故で,体だけではなく,心まで傷を負った患者に対して,どんな接し方が望ましいのでしょうか。
上述の整骨院の先生は,非常に素晴らしい考え方です。
交通事故が起きた時の患者を狙いにいくのではなく,日頃から利幅は少なくとも,きちんと患者を治療して信頼関係を構築。
その中で,交通事故治療もやっている,ということを認知してもらい,いざという時に思い出してもらう,というマーケティングをしているのだそうです。
非常に正攻法で,理にかなったマーケティングだと言えます。
地理的な問題で,なかなか通うことはできません。ですが,真摯に患者と向き合うこの先生は素晴らしいので,機会があれば紹介したい先生でもあります。
一方。
この広告の店舗だけは,どれだけ怪我で痛くても,行きたくはないです。
そう思わせる広告です。
さて,ここから何を学べるのでしょうか。
すべからく,ビジネスとは顧客の問題を解決するものが多数です。
ということは,顧客は何らかの問題を抱えて苦悩しているのです。
それが表面化しているかしていないか,程度のさはあれど,です。
ということは…その問題の苦しみを歓迎するかのような広告は,絶対に出してはいけないでしょう。
私自身,司法書士として相続手続きを扱う身です。
自分がこの整骨院のようにはならないように肝に銘じておきたいものです。
なるべく,一声掛けるようにはしています。
戸籍を見れば,相続開始日…すなわち,死亡日がわかります。
相談日から逆算して,
「初七日がおわったころですね…」
「四十九日が終わった頃ですか?」
「バタバタして大変だったでしょう,ご自身の体もいたわってくださいね」
などと,声は掛けています。
ですが,それは対面だからできることです。
当人がどれだけ思いやりや気遣いをしていたとしても,それは対面でなければ伝わらないことです。
もしかしたら,この人として何かが終わっている広告を出している,整骨院の院長は…菩薩のごとく慈愛に溢れた人格者かもしれません。
それは会ってみないとわかりません。
ただ,この広告からは,カケラほども気遣いが感じられない,ということです。
このブログで,何度も何度も何度も何度も書いてきました。
コミュニケーションは,伝わったことが伝えたことです。
「そんなつもりはなかった」
は一切通用しないのです。
この広告のように,人の不幸を願い,歓迎しているかのような意図を伝えてはいけないのです。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
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