時代背景によって変わるコピーの変遷

時代背景によって変わるコピーの変遷

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 携帯電話大手3社がそろって、携帯販売店で常態化しているスマートフォン(スマホ)端末の「実質ゼロ円」販売を原則撤廃する。NTTドコモが主要スマホを1万円以上値上げして実質ゼロ円を原則撤廃する方針を固め、KDDI(au)とソフトバンクも追随を決めた。過度に安い価格での端末販売を問題視する国の意向に対応する。
3社は携帯販売店に支払う販売奨励金を減らし、代わりに販売店に端末の実質ゼロ円販売をやめるよう近く伝える。古い機種ではゼロ円販売が残る可能性があるが、新機種ではゼロ円販売が姿を消すことになる。奨励金の削減分を使って、携帯をあまり使わない人向けの割安プランを導入したり、長期契約する人に還元したりする方針だ。

 

この記事で、ひときわ目を引く単語があります。
コピーライターとして、
「上手い」
と思うその単語。

「実質0円」
です。

コピーライティングにおいて、昔から変わらず顧客を惹きつけてやまない、強力な単語があります。
それは、
「無料」
です。

「無料」
と書いてあったら、思わず見てしまう、という人が多いのではないでしょうか。

「無料」と「実質0円」は同じではないでしょう。
本来は「無料」と書きたいけれど、書くわけにはいかないので、苦肉の策で出てきたコピーが「実質0円」というところなのでしょう。

この「実質0円」という言葉は、なぜここまで人をひきつけてきたのか。
前提として、
「実質0円」
という言葉はわかりやすいとは言えません。
「実質」
とは何なのでしょうか。
無料とは違う「実質0円」です。

はっきり「無料」と言ったほうがわかりやすいにも関わらずです。

しかも、
「実質」
です。
定義【実質】
実際に事物に備わっている内容や性質。(デジタル大辞泉)

お金を払っておきながら、「実質」0円です。
一見すると内容は矛盾しています。
そのような、わかりにくいメッセージに、人は本来反応しないはずなのです。

それでも、人は「実質0円」に反応します。
その理由、そして、私が「上手い」と思った原因。

それは、
「人は『実質0円』しかわからない」
ということです。

あの、複雑怪奇な携帯電話の料金体験。
その場で説明されれば「なんとなくわかったような気」にはなります。
そして、お店を出て3分もすれば、もうすっかり忘れてよくわからなくなります。

その状況下で、記憶に残る1つの単語。
それが
「実質0円」
です。

本来はわかりやすいとは言えない、この
「実質0円」
だけが、かえって唯一理解できる、わかるコピーとして一人歩きしているのです。

大手携帯電話キャリア3社が、多額の広告宣伝費を掛けて、
「実質0円」
というコピーを認知させました。

もちろん、「無料」には遠く及ばないものの。当面の間は使えるであろうキラーコピーになるのではないでしょうか。

先日、某ネットショップで買い物をしていた時のことです。
その際に、なかなか興味深い状況を目にすることがありました。

ある消耗品。
仮に値段を1234円とします。
価格は、1234円、税込、送料込。
その下に、「初めての方に限り、ポイント還元1234円」

1234円で購入でき、かつ追加費用はかかりません。
さらに、ポイントで1234円戻ってきます。

まさにこれが「実質0円」でしょう。

先着500名限定と銘打ってあり、しかも
「現在の販売件数」
もひと目で見られる方式になっていました。

販売開始から2週間。
販売件数は0。

消耗品で、かつ実質0円であれば、もっと売れていていいのではないかと思うのですが…実際には0。
このような、「実質0円」という極めて強力なオファーにもかかわらず、反応が取れない、という稀に見る現象です。
もし、ここで
「実質0円」
と謳っていたら、もうとっくに完売していてもおかしくないのではないでしょうか。

コピーはわかりやすさが全てです。
「実質0円」
という一見してわかりにくい言葉も、今は通じるようになりました。
その時代背景、その状況によって何がわかりやすくなるのかは、変遷していくようです。

それでも、
「無料」
のパワーには及ばないでしょう。

 

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