今日は、母の日の贈り物を注文しました。
ネットで注文できるのですが、ネットのフォームを一つ一つ入力していってもあまりおもしろくないので、電話で注文。
やはり電話注文はなかなかおもしろいものです。
オペレーターの声のトーン、話す順番、言葉の語尾、そして単語の一つ一つに仕掛けが施されているような感じがして、実にマーケティング魂を震わされます。
今日はそんなやりとりの中から1つ、
「もったいないなぁ」
と思ったことを紹介します。
ある電化製品を買いました。
すると。
「ただいま、購入金額の5%で、5年間の延長保証をお付けすることができますが、いかがなさいますか?」
ご存知、アップセルです。
(「クロスセル」などという人も居ます)
アップセルかクロスセルかはともかく。
このようなサービスを販売すること自体は非常に理に適っています。
では、問題点はどこにあるでしょうか。
ちょっと考えてみてください。
私が気になった点は2つあります。
まずは1つ目。
「購入金額の5%」
です。
さて、いくらでしょうか。
日本も、20年ほど消費税5%の時代だったので、5%計算はだいぶ慣れているとはいえ…商品価格に8%計算された金額に、その5%というのはなかなか暗算するには厳しいものがあります。
金額が明確に提示されないと、高いか安いかすら判断できません。
とっさに
「よくわからないのでいいです」
と答えてしまいました。
今冷静に考えてみて、実際に電卓を叩いてみたら…
「なんだ、この金額だったら入っておいても良かったかな」
などと思った次第です。
次に2つ目。
これが今日の本題です。
金額以前に、そもそも
「5年間の延長保証というのは必要なのか」
が私には判断できませんでした。
だからこそ、
「よくわからないのでいいです」
などと言ったのですが、ここでは何がわからないのかもわかりません。
わからないまま
「よくわからないのでいいです」
と答えてしまいました。
その答えに、オペレーターが
「かしこまりました。では延長保証は、無しで承ります」
で終わりました。
もしここでオペレーターが
「何かわからない点はありますか?」
「どのあたりがよくわからないのですか?」
などと尋ねてきたならば、
「そもそも必要なのか」
という点を質問したはずです。
でも、
「かしこまりました」
で終わってしまいました。
実にもったいない話です。
さて、ではどうすればよかったのでしょうか。
ここでコピーライティングっぽく、心理トリガーを仕掛けるならば、例えば次のような感じでしょう。
「ただいま、この商品は非常に売れておりまして…在庫を確認しますので少々お待ちください」
「在庫確認できました。ただいま、購入金額の5%、今なら 円で、5年間の延長保証をお付けすることが可能です。
大体ですが、割合として10人中7人程度が延長保証をお申込みされていますが、どうされますか?」
解説します。
まず「在庫確認」という形をとって、「たくさん売れている」という言葉にリアリティを演出します。
その上で、
「10人中7人」
と数字を出すことで、
「社会的信用」
という心理トリガーが発動します。
この「社会的信用」の威力を高めるのが、リアリティの演出です。
単純に
「総数10人のうち7人」
と、
「たくさん買っている中で、割合として70%」
と捉えるかで、社会的信用の威力が変わってしまいます。
口には「割合として」と言っているものの、どう受け取るかは顧客次第。
ならば、よりリアルにイメージさせるためのちょっとした仕込みです。
このように、
「社会的信用」という心理トリガーであっても、
「他の人は7割ほど買っていますよ。あなたもどうですか」
という情報提供をすることで、より選択しやすくなると言えます。
社会的信用という心理トリガーを使うことで、「購入に心理操作」している、という一面はあります。
そういう一面はありますが、裏返すと
「顧客が迷ったり困ったりする、ということを回避した」
とも言えるのです。
顧客に迷わせないために必要なことをする。
これが売り手としての責任でしょう。
※7割というのは空想上の数値です。
最後に。
ジェイ・エイブラハムの「卓説の戦略」にもとづいて、本当に顧客の立場に立って考えた場合、どんなメッセージになるでしょうか。
先ほどの「社会的信用」は売主の立場からの心理誘導です。
確かにそれによって「迷う」という問題は解消しました。
けれど、与えた情報は本当は顧客の立場に立ったものかどうかがわかりません。
本当に顧客の立場に立って考えるならば、例えば次の通り。
「今なら(中略)。なお、これまでに5年間の延長保証を申込さられた方で、実際にその延長保証の適用を受けて修理された方は、総数で◯◯◯人。割合としては、3%です。正直言って、必要になる確率はかなり低いとは思いますが、5%の 円という金額で、5年間の保証という安心して使い続けられる状況が非必要であれば申込いただければと思います」
※3%という数字は空想上の数値です。
保険と一緒で、何も無ければただの掛け捨てです。
1人でも多くの方に申し込んでもらったほうが、会社としてはそのまま利益になることでしょう。
だからこそ、正直に
「必要になる確率はかなり低い」
とはっきり口に出すのです。
「それでも◯☓の場合に必要であればお買い求め下さい」
と、ここで購入基準を明確に示すのです。
このような一つ一つが、顧客への信頼を生むのです。
仮にここでその延長保証を申し込まなかったとしても、顧客の印象はどうなるでしょうか。
「売上を上げることよりも、本当に私(買い手)の立場に立って真摯なアドバイスをしてくれた」
と思えるのです。そこに信頼が生まれます。信頼とは、「安心してまた買い物することができる」ということです。
また何か買い物を使用とした時に、
「他の店ではなく、真摯に私の立場に立ってアドバイスしてくれたあの会社に電話してみよう」
と思えるのです。
ここに、商品や価格が入り込む余地はありません。
その会社じゃなければいけないのです。
…これが卓越の戦略です。
「卓越」とはずば抜けて優れていることです。
価格力でもなく商品力でもないところで、圧倒的優位に立つことができるのが、この卓説の戦略なのです。
以上、私なりの「卓説の戦略」についての解説でした。
本物の「卓越の戦略上級編」のエッセンスの100分の1でも伝わっていたなら幸いです。