ここ数年、全く会っていないので、今どこでどうしているかはわかりません。
とある女性の友人の話です。
彼女は体こそ小柄ですが、どこにそんなエネルギーを貯めこんでいるのだ…と思わせるような、文字通りエネルギッシュな女性でした。
当時、上昇気流に乗ったあるIT企業の役員として、セールスを担当していました。
…とはいえ、彼女のメールは、午前2時3時ということも多く、その時間に
「これから会議」
という内容もちらほら。
さすがにエネルギッシュな彼女でも…当時20代の女性が、家にも帰らず会社で寝袋生活をしている旨聞いて、思わず尋ねました。
「なんでその仕事をしているの?」
すると彼女は、
「私は嫌いな業種が2つある。ひとつがIT。もう一つがセールス。だから今の仕事をしているの」
この言葉に絶句し、何も返す事ができませんでした。
二度とない、20代の大切な時期を…嫌いな業種で朝から晩まで過ごしていたのです。
世界ナンバーワン・マーケティングコンサルタントのジェイ・エイブラハム。
彼のビジネスパートナーをしていた、スパイク・ヒューマという人物がいます。
彼自身も非常に優れたコンサルタントです。
彼の話の中で、非常に興味深い話がありました。
数字は…記憶が曖昧なので、正確ではないかもしれません。
彼が、ある会社からコンサルティングの依頼を受けた時のことです。
依頼内容は、生産管理の最適化。
供給に対しての需要が4倍ほどとなっており、供給が追いつかないため、受注全てに対応できる生産管理を実現するのが彼の仕事でした。
そして、彼は仕事を完了しました。
4倍生産できる仕組み化に成功したのです。
ところが。
CEOの女性は、残念ながら、あまり喜ぶことはありませんでした。
なぜなら、4倍生産できるようにすることで、切り捨てたもの、犠牲にしたものもたくさんあったからです。
CEOとの間で、じっくりと話を進めていくと…本当は、4倍のも生産性は望んでいなかったのです。既存客の期待に答えることを、彼女はしたかったとのことでした。
冒頭の友人の女性。
彼女は嫌いな仕事を進んでやっていました。
そこに戦略があれば、また話は別です。
ただ…憔悴した彼女の顔を見る限りでは、長時間労働以外にも、何か心を摩耗させる何かがあったようです。
そして、スパイクのクライアント。
おそらく、株主の期待に答えなければ…という思いから、本当は生産性の拡大はしたくない、という思いを口に出せなかったのかもしれません。
非常に当たり前の話をします。
戦略があって、戦術があります。
よく、戦術の失敗は戦略で取り返せるが、戦略の失敗は戦術で取り返すことは出来ない…などという話もあります。
ただ、言うまでもありませんが、戦略や戦術以前に、「ゴール」がなければいけません。
マラソンで喩えるならば、42.195キロ走るための戦略や戦術を構築しても…ゴールがなければ、永久に戦略が実行、完了されることはないのです。
もしくは、ゴールが間違っていたら、やはり完了することは出来ません。
札幌で開催するマラソン大会にエントリーして、関東の別の場所のマラソン大会でスタートしたところで、本来のゴールに到達することはできないのです。
もう一度、ゴールを見なおしてみましょう。
気をつけなければならないのは、そのゴールが本当に間違っていないかどうか。
例えば。年商1億、とか年商1000万とか、という人がいます。
実に多くいます。
それは、本当にその人自身が到達したいゴールなのでしょうか。
周りがこのように言っているからではないでしょうか。
それをゴールに掲げたらどうなるのか。ITのセールスをしていた友人や、生産を4倍実現してしまったCEOと同じになってしまいます。
もう一度。
あなたのマーケティング戦略を見直す前に、ゴールを見なおしてみてください。
もしかしたら…達成してしまったら、困ることになるかもしれません。