しばらく前のことです。
ある広告代理店から、広告のセールスを受けました。
それは、町内の「地図」に、事務所の広告を掲載してほしい、とのことです。
特に、法律関係の職種がその媒体に1つも出ていなかったため、
「町民の利便性」
のためにも、法律職の方の広告をどうしても出したい、とのことでした。
金額は5万円。
他にもデザイン料やら何やらで、いろいろと掛かるのですが、今回は5万円ポッキリ、という提案でした。
しばらく悩んで、
「同職の方が、他所でこういった地図の広告に掲載した時に、どれくらい反応があったかどうかのデータを教えて下さい」
と言ったら、特にそういったデータは無いとのこと。
けれど、非常に多くの人が目に触れる場所に設置するので、効果は高い…とのことです。
ちなみに、法律関係の仕事としては、相談料は5千円。
書類作成ならば、最低1万円から、となります。
さて、ここで問題です。
この広告費5万円は高いでしょうか、それとも安いでしょうか。
考えてみてください。
多くの経営者が、
「広告費が出せない」
といいます。
お金が実際にある、なし、に関わらずです。
では、この
「広告費が出せない」
という言葉は真実なのでしょうか。
結論から言うと、私自身は、この5万円の広告を出すことを断りました。
理由は、
「この5万円が高いか安いかが判断できなかったから」
です。
多くの経営者が言うところの、
「広告費が出せない」
というのは、お金がないから出せないのではありません。
その広告費が妥当かどうかが判断できないから、その費用を捻出できないだけなのです。
では、どうすれば広告費が妥当かどうか判断できるのでしょうか。
広告代理店が、
「◯万円くらいが妥当です」
「売上の◯%が妥当です」
などと言っているのを聞いたことがあります。
これを信じてはいけません。
そもそも、広告代理店は、あなたから広告を買って欲しい立場です。
その広告代理店が
「広告宣伝費を使うべき」
という意見は、本当にあなたの立場に立った上でのアドバイスなのかを考える必要があるでしょう。
さて、私の場合、先ほどの5万円の広告費を、どう判断したのか。
まず、平均客単価の計算です。
※実際に計算していないので、全くの適当な数字です。
報酬が1000円程度の登記簿謄本取得代行もあれば、5000円の相談料、一連の裁判手続きなどン十万円の報酬もありますが、仮に、司法書士事務所の平均客単価を2万円とします。
次に、顧客生涯価値(LTV…LifeTimeValue)を考えます。
その顧客が一生の間に、どれくらいお金を使ってくれるか、という考え方です。
これも全く計算していないので、適当な数字を挙げておきます。
といっても、【基本的に】あくまでも司法書士事務所の仕事はスポット契約。
単発の依頼がメインとなります。
相続の仕事では、人は2度死にません。
離婚も…2回同じ事務所に依頼することはないでしょう。
破産も…2回同じ事務所に頼むことはないでしょう。
リピートは基本的に想定しづらい状況にあります。
(それでも、リピートするにはどうしたらいいのか…という考え方は今日のテーマから逸れるので省略します)
リピートがあればラッキー、くらいの考え方でいくと、平均客単価がそのまま顧客生涯価値(LTV)となります。
ということは、その5万円の広告費を掛けた場合、2人の新規顧客受託につながれば、赤字です。
3人の新規顧客受託につながれば黒字、というシンプルな考え方になります。
この広告で3人の新規顧客受託に繋がるのであれば、この広告費5万円は「安い」という考え方になります。
では実際にはどうなのか。
結論としては「不明」です。
なぜなら、その広告を見てどれくらい反応があるのか、というデータが無いからです。
根本的な問題として、広告コピー等を自分で考えたりデザインしたりすることができません。
「レスポンス広告」にすることができないのです。
それこそ、業務内容と事務所名、電話番号くらいしか載せられないのです。
しかも、1年で5万円。掲載期間であり、その3年間は、内容を変えることができません。
ということは、
「その広告を見て何件問い合わせが来たのかを判断することができない」
のです。
例えば、新聞広告などは、
「予約時に◯◯新聞を見た、と言ってもらえれば相談無料になります」
と書くことで、◯◯新聞を見た件数を測定することができます。
ですが、今回はその地図設置場所が、事務所のほぼ真正面。
すなわち、事務所の看板の真正面ということです。
その地図を見て反応したのか、事務所の看板を見て判断したのか、その測定ができないことになります。
結論として、
反応が取れるかどうかわからない広告に対して、最大15万円を支払うことに対して、
「高いか安いかが判断できない」
ということになり、広告掲載を見送ることにしました。
もちろん、良いコピーであれば反応が増えることもあれば、悪いコピーで反応を下げることもあります。
ですが、広告媒体としての影響力は無視できません。
良いコピーさえ書ければ反応が取れるとは限らないのです。
顧客生涯価値と広告宣伝費、推測できる反応率の試算から、その広告費は高いか安いか判断できます。
ですが、それらデータが揃わないと、高いか安いかは判断できないのです。
逆に言うと、数字さえ揃えば、広告宣伝費が安いか高いかを判断することができるのです。
広告費以上の収益が見込める確証があるならば、どんどん広告費を出したほうがいいということになるのです。
広告代理店による自己都合的なセールストークに載せられず、自分で
「その広告費は出したほうがいいのかやめたほうがいいのか」
を判断できるようになって下さい。
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