やってはいけない「もやし戦略」

やってはいけない「もやし戦略」

やってはいけない「もやし戦略」
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札幌から家に帰る途中のことです。
24時間営業のスーパーに立ち寄って,買い物をしました。

地元では,司法書士という仕事をしている関係もあり,なるべく町内では買い物しないように気をつけています。
スーパーで,カップラーメンをカゴに入れているところを依頼者に見られたくないですから…

それはさておき。

ガソリンが急激に跳ね上がって,ニュースになっています。
他の様々な食品,特に野菜も高騰しつつあります。
スーパーは,マーケティング的発想を養う良い場所でもあり,ブログのネタの宝庫。
(現に,今日のネタになっています)

意識して買い物はしているのですが…値上がりの実感はよくわかります。

ネギは,以前は3本の価格だったのが,今では2本です。
大根も,高くなってサイズが一回り小さくなった感じがします。

ニュースを見る限り,
「緩やかな回復」
を謳っているようですが,一般家庭では,景気回復がどこまで実感しているのでしょうか。

それを印象づける写真が,今日のアイキャッチ画像です。

もう少しバックから撮れば分かりやすかったかもしれません。
そう,もやし売場。
黒いネットが敷き詰めてある上に,もやしが並んでいるはずですが,1袋もありません。
商品棚には,さまざまな野菜や果物が並んでいる中で,もやし売場だけは,ぽっかりと空白。

私の空間認識能力によれば,ざっくり1メートルくらいの横幅に,4段の売場。
在庫はゼロです。

ネギとか,もやしとか,レタスとか,食感で味わう野菜が好きなので,手に入らず残念でした。

さて。
このもやしという商品は不思議なものです。
景気変動に左右されません。
いつでも,とんでもない低価格のままです。

もちろん多少の値段の変動はありますが,元の価格が安いだけに,ほとんど差を感じません。

もやしは,基本的に工場内で,水で育てるもののようです。
すなわち,天候に左右されないということです。
天候に左右されないので,生産量も外部要因に揺さぶられることはありません。
しかも,1週間〜10日ほどで出荷できるようです。

安くて価格変動も少ないのが納得です。

野菜炒めなどのカサ増しとして,極めて優秀な商品なのでしょう。

さて,このもやしという野菜をマーケティング的に考えてみましょう。

工場生産なので,天候に左右されません。
ということは…先日このスーパーはたまたま欠品していましたが(来店時間が23時頃だったので,品出しが追いついていないのでしょう),基本的に手に入らなくなるということはないのでしょう。

つまり…手に入らなくなることはない,ということは希少性は皆無です。
世の中,希少性があったほうが,価格が上がります。
逆に,希少性がなければ,価格は下がります。

また,7日〜10日ほどで出荷できる商品です。
他にもあるのかもしれませんが,1週間ちょっとで出荷できる商品は,ちょっと思い当たりません。
要するに,いくらでも生産できる商品ということになります。

やはり,これも希少性は下がります。
価格も下がるということになるのです。

もやし自体は非常に優秀な野菜ですが,とにかく低価格だから…というベネフィットが全面に出ている感があります。
例えば,この写真ではもやし1袋14円ですが,「もやし1袋100円」となった場合,どれだけの人が買うのでしょうか。

「もやしを食べたい」
から買う人はどれだけいるのでしょうか。ほとんどの場合,安いからついで買いするのではないでしょうか。

この話…どこかで聞いたこと,あるのではないでしょうか。
商品やサービスは素晴らしい。
けれど,高いと買ってもらえない。
仕方なく値引きする。
すると…その商品やサービスが「良い」から買ってもらえるのではなく,「安い」から買ってもらえるようになる。

多くの経営者が,安売りしてしまい,利幅の低さに苦しんでいます。
原因は何なのか。
身も蓋もないですが,
「安売り」
するからです。

「安売り」
するから,購買の動機が「安いから」になってしまうのです。

その商品やサービスによって得られるベネフィットではないのです。

さて,この低価格で苦しんでいる商品と,もやしとの間には,決定的な差があります。
それは,生産力です。
1週間程度で,どんどん出荷できる野菜と,手間ひまかけて生産した商品,あるいはサービス。
比較することなどできないでしょう。

もやしは,圧倒的な生産力で,「薄利多売」でもビジネスは成立するのでしょう。
ですが…手間暇かかるものを薄利多売したところで,ビジネスは成り立たないのです。

値下げは…学生のアルバイトでもできます。
簡単です。
ですが,値下げした先に未来はありませんん。

圧倒的な生産力で,薄利多売。
このビジネスモデルは,中小零細企業には不可能なのです。

結局のところ行き着く先は,
「どうやって価格を維持するのか」
「どうやって価格を上げるのか」
ということになるのです。

あるいは,値下げせずとも,買ってもらうためにどうしたらいいのか。
これを毎日毎日ひたすら考えて試行錯誤をしながら実行し続けるしかないのです。

最後に。
もやしも,生産者側は原材料の高騰で苦しんでいるようです。
災害などの影響は受けなくとも,原材料の高騰自体はどうしようもありません。
けれど…「もやしと言えば安い」というイメージが先行しているので,生産者も苦しい状況でしょう。
安さを全面に出すと,結局は苦しくなるのはもやしでも同じようです。

【残席1名】
2018年も,たった348日で終わりです。

やはり,価格を維持して販売するには,集客力は欠かせません。

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