先日，５０代半ば頃の方から，興味深い話を聞きました。
自動車電話の話です。
あなたは，自動車電話というものをご存知でしょうか。
若い方は，全く知らないかもしれません。
一昔前の通信手段と言えば，固定電話のみ。
あるいは電話ボックス等の公衆電話がメインでした。
それから，ポケベルが流行り，自動車電話が登場。
PHSから携帯電話に移行していきました。
私が学生時代の頃は，公衆電話でポケベルのメッセージを発信している人がいて…指先が見えないくらい凄まじいスピードで，電話の番号キーをつついている人をよく見かけたものです。
そんな時代の話です。
さて，自動車電話と言えば，どんなイメージでしょうか。
もちろん，今の若い人であれば，骨董品，レトロ…というイメージになるでしょう。
ですが，当時の時代を生きた人に取ってみたら，自動車電話とはまったく別のイメージでした。
私自身は，まだそこまでの年齢ではなかったので，テレビを見るくらいですが…テレビで自動車電話を利用している人…といえば，忙しいビジネスマン。
当時，「２４時間戦えますか」のキャッチコピーで有名な，あのドリンク剤，リゲインが大ヒット。
CMも一世を風靡しました。歌詞はJAS●ACが怖いので引用は避けます。余談ですが，曲名は「勇気のしるし」です。
今の時代であれば，「どれだけブラックなんだ！」と炎上しそうですが，当時は，「モーレツ社員」がもてはやされる時代でした。
そして…そんな「イケてる」ビジネスマンが，自動車電話を颯爽と使いこなしている様が，ドラマなどで放映されました。
…ということは，自動車電話といえば，「イケてる」ビジネスマンの象徴的アイテムだったわけです。
さて，興味深いのが，自動車電話…ではなく，アンテナ。
自動車電話を使うに当たっては，当然「アンテナ」が必要です。
つまり，アンテナが立っている自動車は「自動車電話」が登載されている証拠です。
「イケてる」ビジネスマンの象徴が，外形上は自動車電話ではなくアンテナで表示されていたのです。
…ということで，登場したのが，「ダミーアンテナ」です。
自動車電話は登載されていないのに，アンテナ【のようなもの】を取り付けることによって，
「この車は自動車電話が搭載されている」
とアピールできたわけです。
ちょっと考えてみて下さい。
ダミーアンテナ。
これにはどんな価値があるのでしょうか。
驚いたのですが，未だにこのダミーアンテナは販売されています。
Amazonで普通に売ってました。
商品説明には，こんなことが書いてあります。
「あくまでも、ダミーですので、本来の業務用周波数用にもアマチュア無線用にも、送受信は出来ませんので、ご注意下さい」
つまり，アンテナとしては何一つ活用できないシロモノなのです。
こんなものにどんな価値があるのでしょうか。
自動車電話など廃れて久しいのに，なぜ未だにこんなものが売っているのでしょうか。
価値はあります。
ただ，その価値とは，
「アンテナとしての価値」
ではありません。
上述の通り，アンテナとしては機能していないのですから，意味はありません。
意味が無いのに，アンテナのようなモノを付ける。
どんな意味があるのか。
「カッコイイ」
と思えるから，でしょう。
そこに価値があるのです。
このように考えてみると，
「価値」
とはどこまでも奥深いものです。
例えば，飲食店の価値とは何でしょうか。
「味」
だと思っている人は，きっと痛い目に遭うでしょう。
どれだけおいしい料理が出てきても，店員の態度が悪かったら，
「あの店，サイアク」
という印象が残るでしょう。
そこにあるのは本来の商品である「料理の味」ではないところで「価値が暴落」しているのです。
今の時代は，もはや「品質」だけでは勝負できない時代なのです。
品質以外で，顧客が何にどのような価値を感じるのか。
逆に言えば，価値を感じたならば，「品質は二の次」と言えるかもしれません。
アンテナとして機能しないものが，未だに売っているのですから。
このような視点で，
「顧客に対していかに価値提供するのか」
を考えると，意外とできることはたくさんあるでしょう。
有名な例では，タクシー会社。
タクシー会社が，品質で勝負しても限界はあります。
そもそも，値段も全て固定されて，自由にできません。
いちいち変更の届け出が必要な，規制だらけの業界です。
この業界で，どのように価値を届けるにおか。
やったことは，ビジネスマナーの徹底です。
他のタクシー会社がやっていないので，ビジネスマナーを徹底したタクシー会社は，その地域で一人勝ちしたそうです。
ビジネスマナー，あいさつや礼儀を徹底。
これは，
「顧客を目的地まで運ぶ」
というタクシー本来の価値とは全く違うものです。
それでも，価値は上がるのです。
ぜひ，今までとは違う側面で，
「価値とは何か」
を見直してみて下さい。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
追伸
今年もあと３３３日。
あっという間に１ヶ月経ちました。
１月の調子はいかがだったでしょうか。
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