なぜコピーを書かない「コピーライター」なのか

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 中学1年生の春。
 ある教師との出会いがありました。
 国語科の教師でした。
 彼は、国語の時間のうち週1コマを、
「作文」の授業として当てていました。

 毎週、原稿用紙に作文を書き、提出します。
 翌週にその原稿について
 評価されて戻ってきます。

 

 そしてまたその時間に作文を書きます。
 中学1年生から3年間、
 ずっと同じその教師の元で、
 毎週1回、作文を書き続けました。

 

 評価は、A+、A、A-、B+…という形で表現され、
 一言コメントが付けられて戻ってきます。

 一学年約140人。
 毎週作文を読み続けてコメントを付けて返却…
 というのは、
 相当の労力が掛かったのではないかと思われます。

 ですが、彼は信念を持って
 この作文の時間を続けていました。

 

 この作文の時間が、私の人生を変えたのです。

 

 幼い頃から本が好きで、
 親から消灯を言い渡されて
 部屋の電気を消されても、
 窓の外の街灯の明るさで本を読み続け…
 年齢1桁の頃から眼鏡が手放せなくなりました。

 

 愛読書は、辞書や辞典。
 特に四字熟語やことわざ辞典が好きで、
 中学受験勉強の合間に、
 休憩としてこれらを読みふけっていました。

 

 読むのが好きだったのですが、
 書くのも好きだ、という気付きのきっかけが、
 この作文の時間だったのです。

 素晴らしい文章を書いていた、
 とは言えません。

 

 中学三年間、毎週書き続けて、
 最高評価のA+をもらったのは、
 1〜2回程度。ほとんどが、
 A-で、だんだんA評価をもらえる
 頻度が増えてきました。

 

 逆に、B+評価以下をもらったのも
 3年間で1回〜2回程度。

 それでも、この作文の時間が楽しくて…
 45分の授業コマのうち、
 半分ぐらいで一気に書き上げてしまい、
 残りの時間を手持ち無沙汰にしていたのを思い出します。

 

 中学を卒業することでこの作文の時間も無くなり、
 まとまった文章を書く機会は減りました。
 大学でも、卒論を選択せずに卒業しました。

 

 ですが、当時の私が選択した職業は、
 司法「書」士であり、行政「書」士。

 

 文章…ではないかもしれませんが、
 書類作成のスペシャリストの道に進んだのです。

 

 開業当時は、
 人付き合いが下手でコミュニケーション能力も低く、
 セールスもほとんどできませんでした。

「何を言うべきか」
 はわかっても、
「それを人前でしゃべる」
 事ができず、開業当初は集客に苦労しました。

 当時はマーケティングも
 コピーライティングも知らなかったので、
 何をしていいかわかりません。

 

 思いつめて、
 飛び込み営業をしたこともあります。

 

 あれから10年以上経ちますが、
 今もなおあの時の受付の女性が私を見る
 冷たい眼差しを忘れることができません。

 

 預金残高がみるみる減っていき、
 不安に押しつぶされそうな日々。

 そんな私を救ったのが、やはり「書くこと」でした。

 

 当時は、ホームページの黎明期。
 市販のホームページ制作ソフトで作った
 拙いホームページに、
 たくさんの文章を書いて載せました。

 

 その結果、問い合わせが増えてきて、
 かろうじて生活が成り立つようになりました。

 

 まだ、自分の核心が「書く」ことだと
 気づいていない頃に受託した、
 ある案件があります。

 

 内容証明郵便作成の依頼です。
 男性の浮気が原因で破綻した男女関係において、
 女性から男性に対する婚約破棄による慰謝料請求です。

 

 非常に不誠実な男性で、
 かつ十分な財力もあるわけではないので、
 内容証明郵便を書いて慰謝料請求をしても、
 支払われる見込みはない旨伝えました。

 

 けれど、依頼者はこの男性の仕打ちによる憎しみに、
 心が捕われてしまっているので、

「結果はともかく、
 泣き寝入りするのではなく
 せめて請求だけでもしておきたい」

 

 依頼を受け、内容証明郵便を作成し、
 依頼者の女性に見せました。
 すると、その女性は泣き出しました。

「私の言葉にできなかった思いを、
 全てこの文章に込めてくれた」

 結果的に、
 男性からは慰謝料の支払いはありませんでした。
 それでもこの女性は「気が済んだ」とのこと。

 

 その後、
 マーケティングやコピーライティングを
 学んで実践した結果、
 集客できるようになりました。

 

 債務整理の相談を、
 片道3時間掛けて来所いただいた方がいます。

 

 その片道3時間の距離を聞いて、
「途中にも事務所は他にもたくさんありますよ」
 と言ったところ、

「先生のホームページを見て、
 3時間掛かったとしても、
 どうしても先生に相談したいのです」

 と言われたこともあります。
 これも、書くことによる成果です。

 

 集客できるようになったら、
 忙しくなったため、従業員を採用。

 すると…大幅に生産性が落ちました。
 ある意味当然と言えます。
 自分以上に仕事を知っている人を
 採用したわけではないからです。

 その都度仕事を教えて…
 自分の仕事もします。

 わからないことがあるとその都度尋ねられ、
 そしてその都度集中が妨げられます。

 こうして、仕事の生産性が激減し、
 かえって忙しくなってしまったのです。

 

 この問題を解決したのも「書くこと」でした。

 従業員から質問され、
 その場で回答すると、
 覚えるまで同じことを何回も何回も尋ねられます。

 しかも、従業員が入れ替わり、
 新しく採用すると、また最初からやり直しです。

 そこで、質問に対して、
 全て書面で回答したのです。

 

 また、全ての業務指示を、
 口頭ではなく書面ですることにしたのです。

 その上で、質問は、
 これまでの書面に書いていない事項、
 あるいは書いてあってもどうしても
 わからない時にのみ質問を許したのです。

 

 すると、だんだん質問されることが減っていき、
 自分の仕事に集中することができるようになりました。

 

 従業員が入れ替わっても、
 すでに書いてあることを
 順番に読ませるだけでいいので、
 私が仕事を教える役割から開放されました。

 

 それらの結果、私が事務所にいないと
 事務所が成り立たない状態から、
 最高で4週間事務所を留守にして
 海外研修に出かけても、
 滞ること無く回る体制になったのです。

 

 私の提供しているサービスの8割ほどが、
 コンサルテイングサービスになります。

 なぜなら、
 コピーを書くまでもなく
 売上アップを実現することができるからです。

 

 実際に、
 コンサルティングだけで
 売上アップを実現するため、
 コピーライティングの依頼にまで
 ならないケースが経増えています。

 

 ならば、
 私の肩書は「マーケティングコンサルタント」と
 すべきかもしれません。

 あるいは、
 「集客の責任者」と捉えるならば
 「外部CMO(最高マーケティング責任者)」
 という呼称が適切でしょう。

 

 ですが、頑なに「コピーライター」
 という肩書を名乗ってきました。
 最近では、「コピーを書かないコピーライター」とまで言っています。
 この違和感、
 現実との乖離について悩んでいたこともありました。

 

 この理由。
 それは、書く専門家で在りたいからです。

 

 毎日、概ね最低1500文字程度のブログを書き続けています。 
 月に1回、ニュースレターを書いています。

 

 昔から変わらないもの。
 士業という仕事から、
 今のコピーライティングまで、
 一貫して「書くこと」に対するこだわりと思い入れです。

 

 結果的にコンサルテイングの仕事が多くなったとしても、
 それでも書くことが私の主軸なのです。

 

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