無料から有料にアップグレードを促す二重策

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毎日書いている、このブログ。
ブログの下書きとして、大活躍しているのが、Evernote(エバーノート)です。

月間アップロード容量制限はありますが、全体の容量自体は完全無制限です。
この点で、似たようなクラウド型アプリ、ドロップボックスと大きな違いがあります。

さて、このエバーノートですが、最近大きな手を打ってきました。
なるほどなぁ、と大変感心したので紹介します。

通常プラン(ベーシックプラン)であれば、完全無料です。
一つ上のコースが「Evernoteプラス」というもの。料金は年間2000円でした。
ベーシックプランと違って、いくつかできることが増えています。

最上級コースが「Evernoteプレミアムコース」です。年額が4000円でした。
さらに、出来ることが増えています。

ところが、今回、この料金が値上げです。
Evernoteプラス   2000円→3100円
Evernoteプレミアム 4000円→5200円

上手いのはここから。
期間限定で、このプレミアムコース5200円を半額2600円で販売しているのです。

まさにこれが、
「強力なオファー」
の良き模範例です。

半額で、プラスよりもプレミアムを体験してもらうことで、プレミアムの価値を実感してもらい、年間契約の更新を狙ったもの、と言えます。

プレミアムコースがどれほど便利なのか、プラスコースよりもプレミアムコースを選んだほうがいいのか。
これは100の言葉を費やして説明するよりも、実際に使ってもらったほうが早いのです。
そのため、プラスコースよりも安いプレミアムコース50%オフ、と言えます。

とはいえ、それでも
「ベーシックコースでいいじゃないか」
という方も多いでしょう。
今まで無料で使っていたものを、半額とはいえ、なぜ有料コースに申し込むべきなのか。

今回のキャンペーンで、一番上手いと思ったのが、
「改悪」
などとも揶揄されている、次の変更です。

それは、これまで無制限だった、ログイン端末数を2台に制限されたのです。

例えば、これまで、「スマホ」「PC」「タブレット」の3台でEvernoteを使っていた人にとっては、どれか1台を諦めるか、それとも有料プランに申込するかの2択を迫られることになるのです。

値上げをすること自体は、さほど珍しくもないでしょう。
値上げ後の料金を見て、「それでも買う」か「買わなくなる」の2択です。

ですが、Evernoteに関しては、「値上げ後の料金で申し込む理由」を作ったのです。
いわゆる「抵抗できないオファー」、つまり、抵抗するよりも抵抗しないほうが楽なくらい魅力的なオファー、というものとはまたタイプが違います。

抵抗しないほうが「マシ」だと思えるような理由を用意した、ということになるのです。

これまで無料のものを、有料にアップグレードするための仕組み。
これが本当に上手い例として紹介しました。

では、この改定で、Evernoteは何を失うのでしょうか。

おそらく、すでにプレミアムコースを使っている人は、今回の値上げでEvernoteに見切りをつける…というケースは少ないでしょう。
もともと無料で使えるものを、年額4000円払って使ってきたのです。

プラスコースを使っている人は減るかもしれません。
なぜなら、プレミアムコースに乗り換えたほうが安いからです。
でも、1年後に、そのままプレミアムコースで更新される人数を考えた場合、損することはないでしょう。

ということで、減るのは無料で使っているベーシックコースのユーザーです。

では、無料で使っているベーシックコースのユーザーが減ったら、売上はいくら減るでしょうか。
無料会員が減っても…売上は減りません。
もちろん、母数が減る以上、アップグレードする率も減る可能性はあります。
ですが、今回の改定で、利益自体は大きく伸ばしたのではないでしょうか。

結果的に、失うものは…ほぼ許容できる範囲です。

調べたかぎりで2010年に日本語版が登場。
ということは6年掛けて、浸透するのを待ってから、このような有料プランに誘導する策を打った、ということでしょう。

なんとも見事という他無い、素晴らしい打ち手でした。
この、オファーの出し方、特にアップグレードする理由をきちんと用意すること。ここから学べることはたくさんあります。

余談です。
私自身は…未だにガラケー(しかもPHS)ユーザーなので、スマホを持っていないため、アップグレードする理由はありません。
ここまで書いておきながら,私はきっとアップグレードしないのではないか,と思っています。

あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
飯山陽平

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