平成18年8月。
当時埼玉に住んでいた私は、北海道が好きで北海道に移住しようと考えていました。
道内在住の知人に頼んで、司法書士事務所の開業地候補を探して、道内のあちこちを見て回りました。
その1つが、夕張市。
その友人の生まれ故郷だったこともあり、町に法律家が一人もいないこともあって、ぜひその町で開業してほしい、という思いもあって、案内されました。
残念ながら、マーケット的に難しいと判断。
当初の予定どおり、今の町で開業することに決めました。
とはいえ、その時に夕張を訪れたことで、あるきっかけができました。
それは、夕張メロン。
ものすごく高くて、とても手が出ない…というイメージしかなかったのですが、地元で買えば、意外と安い。
好き嫌いが多く、特に果物は嫌いなものばかりな私としては、メロンは数少ない大好物の果物。
移住した直後に夕張市が破綻したこともあり、少しでも夕張市内で消費を…と思って、毎年シーズンになると、夕張までメロンを買いに行くのが恒例行事となりました。
とはいえ、夕張市内を車で走っていると、「夕張メロン」「販売」といった看板はいくらでもあります。
どの店で買うのがいいのか。
私は、たまたまある店が気に入って、その店で毎年買っています。
…が、コピーライティング的に、この
「たまたま気に入った」
というのは非常に曲者。
これをうまく言語化できれば、大きなリサーチ成果に繋がります。
ということで、敢えて移住した9年前の夏の記憶を掘り起こしてみたところ、一つの看板を思い出しました。
「ウチのメロンは日本一」
当時は、「日本一なんて、ホントかいな」くらいの気持ちでその店に立ち寄ったのを思い出します。
ですが、店主の気さくな性格や、品揃えの数の多さもあり、なんとなく翌年もその店に行ったところ、
「こんにちは、今年も来店ありがとうございます」
とのこと。顔を覚えていてくれたこともあり、ずっとその店で買い続けています。
さて、今日のテーマは
「そのコピーを使う覚悟」
です。
当時は、「ホンマかいな」で済ませていましたが、今は違います。
「ウチのメロンは日本一」
夕張のような、小さな田舎町で、よくこんなコピーを使えるな…と、驚きます。
実際、町中にこのコピーの立て看板があちこちあって…よく、そんな看板を町中に置ける、と感心します。
なぜなら、
「ウチのメロンは日本一」
と言うことは、
「あんたのところのメロンはウチ以下」
というメッセージに他ならないからです。
それだけの自信と確信があればこそのコピーなのでしょう。
実際に聞いてみたところ、50年の歴史があるのだとか。
調べてみたところ、夕張メロンの歴史は1961年から。
今から55年前です。
夕張メロンの黎明期から、売り続けてきた歴史が、ここまでの強気のコピーに繋がったのでしょう。
今日、訪れた際に話を聞いたのですが、今年は収穫量が少ないそうです。
毎年同じ量を仕入れしたところ…他の店の在庫が少なくなった、などという話もあります。
すなわち、収穫量が少なくとも、それでも例年と同じだけの仕入れができるくらいの影響力があるということなのでしょう。
また、「特秀」という最上級のメロンが、いくつも店頭に並んでいました。
ここに書いてあるとおり、まさに「幻のメロン」なのだそうで、流通量の全体の1%程度とのこと。
帰りに、別のメロン店を除いてみたのですが、「特秀」は置いておらず…その下の「秀」が、「特秀」の1.5倍くらいの価格で販売されてました。
どれだけ強いコピーも、その背後にある裏付けがなければ、空回りするだけです。
この店の強みは、「日本一」かどうかは分からないにしても、それだけの強い仕入れ網や影響力、歴史があればこそです。
素晴らしいコピーが、強い反応を引き出すというわけではありません。
素晴らしいコピーには、その強い反応を引き出すに足りる裏付けというものが必ずあるのです。
強いコピーを考える前に、…その裏付けとなる強みを探してみるのも一つの手です。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
飯山陽平