北海道在住で…かつ,テレビを見ている人であれば,たまにCMが流れるのを耳にしたことがあるかもしれません。
道内有数の,ある銀行のテレビCMです。
具体的には,その銀行のカードローンの新規申込みのための宣伝です。
謳い文句は,
「最短15分で審査完了」
といった趣旨のようなものです。
いちいち意識していられないので,大抵は聞き流してしまいます。
ふと意識した時に,
「これってどんなベネフィットなんだろうか…」
と考えます。
15分が,長いのか短いのかもわかりません。
15分で回答がくることで,何がいいのかもわかりません。
ただ,「15分で審査完了」すなわち,借りられるかどうかの回答がくる,ということです。
…そんな取り留めもないことを考えていたつい先日。
2年ぶりくらいに,ヤミ金処理の依頼が来ました。
電話を掛けてきた女性の泣き声を聞きながら…
「ああ…こんな人にとってみたら,15分で借りられるかどうかの判断がわかる,というのはベネフィットなのかもしれない」
と実感。
そこで,ふと我に返りました。
これは,典型的な,(誇大広告とまではいいませんが)少々悪質な,効果を大きく見せるテクニックです。
単に,最初に数字を見せることで,その数字を基準に考えさせる,ということです。
コントラスト(比較)の法則とはまた違います。
なぜなら,コントラストの法則は,後から出てきた数字に影響を及ぼすからです。
例えば,松竹梅。
うな重(松)7000円
うな重(竹)4000円
うな重(梅)2000円
この場合,最初の7000円を基準にさせることで,竹と梅を安く見せようとする思考誘導がコントラストの法則です。
「最短15分」は,後から数字が出てくるわけではないので,コントラストの法則ではありません。
ですが,少々悪質な…といったのは,「最短15分」だからです。
最も効果が高いこと「だけ」を謳って,都合の悪いことを言わないということです。
言い換えると,最短15分で,最長で1週間かもしれません。
そして,100件の申し込み中,15分で回答するのが,2件,つまり2%くらいでも,
「最短15分」と言っていること自体は,ウソではありません。
だから,「悪質」だと表現しました。
そして…多くの消費者が,この手の「大きく見せる」宣伝の手法にだまされ続けました。
最短15分だけど…どうせ…と思うわけです。
アウトレットモールの,
「最大70%オフ」
と同じようなものです。
つまり,店内に70%割引のものが1点でもあれば
「最大70%オフ」
と謳っても,嘘ではありません。
ですが,殆どが2割引程度,というものです。
この手の広告では,消費者の心に響くものがないのです。
一番都合のいいことだけを謳っても,反応を得るのは難しいでしょう。
かくして,「最短15分」は,ベネフィットだけではなく,ただのウザイ広告に成り下がっています。
では,その反対だとどうなるのでしょうか。
最長を謳う,ということです。
これを本気で「覚悟」を示した結果,世界ナンバーワンになった,という事例はあります。
このブログをこれまでにずっとご覧の方だったら…あるいは,マーケティングを勉強したことがあるなら,誰でも知っている,あの企業のコピーです。
ドミノ・ピザの,
「熱々のピザを30分以内にお届けします。間に合わなければお代はいりません」
というものです。
ドミノ・ピザは,これで世界ナンバーワンのピザチェーン店にまでなりました。
もし,これで
「最短30分」
だったらどうでしょうか。
きっと,今もなおアメリカの片隅でほそぼそと営業をしているか,倒産していたかもしれません。
切羽詰まるほどお金を必要としている人,
お腹をすかせている人。
急いでいる,という点では同じです。
本当に急いでいる方相手にすればこそ…
言い換えると,顧客が本当に求めているものに対して,どう対処するのか。そこにその企業の本質が現れます。
つまり,銀行という大きな組織を徹底的に構造改革して,どんな方でも絶対に30分以内に審査回答する,という覚悟を示して,
「必ず30分以内に審査回答。間に合わなければ,Amazonポイントカード500円を進呈」
と,リスクリバーサルまでやれば,多くの申込が見込めるかもしれません。
都合のいいことだけを言っても,顧客の心には響かないのです。
せめて,両方をきちんと伝えることを心がけてみて下さい。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
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