10年ほど前でしょうか。
私用で,一人でアメリカに行ったあと,帰りのことです。
残念ながら,成田空港までの直行便ではなく,乗継便での帰国途中のことです。
その時は…アトランタ空港だったかと思うのですが,乗継先の搭乗口まで,迷いに迷って大変でした。
ろくに英語が喋れるわけではないので,誰かに尋ねることもできません。
汗だくで,息を切らせながら,ようやく搭乗口にたどり着いた時には,すでにそこはすでに閑散としており,係員が1人,ぽつんと立っていただけでした。
なんとか機内に搭乗し,ほっと一息ついたことを思い出します。
その時とは別の話です。
今度は…確か,デトロイト空港だったかと思います。
その時も,アメリカから日本に帰る時の乗り継ぎで,空港内をさまよっていました。
アメリカの大規模な空港ともなると,空港内を鉄道が通っていることもあります。
来た鉄道に乗って…全く違うところにたどり着き…慌てて戻る。
そんなことを繰り返していました。
すると,あるエリアに入った瞬間,極めて注意を引くものがありました。
それは,標識です。
上述の通り,ろくに英語ができないので,読むこともできません。
ですが,その時は,その標識が目に飛び込んできたのです。
なぜか。
それは,その標識が日本語だったからです。
海外で何から何まで外国語に囲まれた中で見かける,日本語の表示は…芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のごとく,一筋の光であり希望のように感じます。
その日本語表示の案内を辿って,その後は一度も迷うこと無く回り道することもなく,目的の搭乗口にたどり着きました。
それだけ,外国語の中に囲まれた日本語は注意を引くものだったのです。
ほぼ,ノータイムで,読み取ることができるのが,日本人である私にとっての日本語です。
言葉というものは,極めて根深く依存するものです。
成田空港についた瞬間…
「この後は何があっても問題なく帰れる」
と安堵したのを覚えています。理由は,日本語が通じるからです。
私自身,何か特殊なスキルを持っているわけではありません。
コピーライターという立場上,人よりも,ごく僅かに日本語の使い方に慣れているだけです。
海外に行ってしまえば…自分のスキルや能力,他よりも秀でたアドバンテージは何一つありません。
逆に言えば,国内であれば,少なくとも自分の中の一番の強みである日本語が通じる。
これだけで,何にも代えがたい安堵感につながります。
それだけ馴染みのある言語は,反応が早いものです。
先日,支笏湖(しこつこ)の湖畔を運転していました。
そこから峠道に入っていく途中で,工事による片側交互通行の規制がされていました。
誘導員が,白い旗と赤い旗を持っており,通ってよければ白い旗を振ります。
片側交互通行ですので,対向車線から車が来ている間は,赤い旗をかざして,停止させます。
これが,普段の片側交互通行において,誘導員の行う対応です。
ところが,その日は,看板を掲げていました。
青い背景に,文字が幾つか。
英語で「GO」と,ハングル文字,中国語らしき文字が並んでいました。
裏返すと,赤い背景で,同じく英語,ハングル文字,中国語らしき文字です。
日本語が書いてありません。
見慣れない看板で,見慣れない言語だけに,刹那の間ですが戸惑います。
定義【刹那】
仏語。時間の最小単位。1回指を弾く間に60あるいは65の刹那があるとされる。
転じて,極めて短い間,という意味で使われます。
片側交互通行なのはわかっているので,スピードは出ていません。
とはいえ,刹那の間であっても,運転手が戸惑う。
そんな交通誘導は極めて不適切だと言えるでしょう。
ここは,日本です。
確率的に,圧倒的に日本人ドライバーが多いのはわかっているはずです。
にも関わらず,英語,中国語,ハングル文字。なぜか日本語がありません。
これは明らかにおかしいでしょう。
上述の通り,外国の中で,自分の母国語があると,希望の一筋になります。
だからといって,私はデトロイト空港で,日本語だけを見たわけではありません。英語と並列して日本語を見たのです。英語が書かれていなかったわけではないのです。
最大多数の読み手にとって,最大多数の一番馴染みのある言語がない。
これは極めて異質で不適切です。
刹那の間であっても,注意を反らせ,戸惑わせてしまうだけでしょう。
繰り返します。
刹那という時間の単位は極めて短いものです。
ですが,その刹那の間が無限に繋がることがあります。
それは広告です。
広告において,刹那の戸惑いは,無限のタイムラグをもたらします。
つまり,二度とその広告を見ない,ということです。
それだけ,注意を引くことが大切であり…それ以上に,注意を逸らせてしまう原因を作ってはいけないのです。
ここでいうところの,日本人相手に日本語が書かれていない,ということです。
極めて回りくどく…ですが当たり前のことを書きました。
もう一度,あなたの広告を見て,不適切に,不相応に注意を反らせるものはないか,チェックしてみてください。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
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