かつて,私が入院していたときのことです。
骨折の影響で手術をするための入院だったのですが,当時は喘息持ち。
喘息があると,麻酔薬との関係でどんな影響が出るか分からないため,手術日の数日前から入院し,その病院で処方された喘息の薬を服用しました。
どうにもその副作用がきつくて大変。
それまでは,長年お世話になっていた,かかりつけの町医者に処方してもらった薬を飲んでおり,副作用はほとんど感じません。
ところが,入院先の病院では,その薬は扱っていないらしく,別の薬を処方されました。しかも,成分量は町医者の処方の倍。
元々,かかりつけの町医者のところでも副作用がきつく,長年の試行錯誤の上,副作用が抑えられ,かつ喘息の発作も出ない量を見極めてきました。
しかし,入院先は整形外科。
内科もありますが,そういった過去のデータも無いため,その内科医の判断で薬が処方された結果,副作用で苦しむことになりました。
入院中だったので,医師も巡回に訪れます。
整形外科の医師だけではなく,喘息の薬を処方した内科医も巡回に来るので,思わず,
「らくまで飲んでいた薬を,これまでの量処方して欲しい。その方が楽だ。知り合いの薬剤師に相談したが,きちんと医師に伝えた方がいいと言われたので,(薬の変更を)お願いします」
と言ったところ,内科医は逆ギレ。
「その薬剤師に全てお世話になればいいじゃないの!」
とヒステリックになっていました。
さて。
この医師の反応です。
いい年したおばちゃん医師が患者にヒステリックになるのはどうかと思うのですが,ここに医師の苦労が見え隠れしています。
私も,士業として「先生」と呼ばれる立場になってから,この医師の苦労が分かるようになりました。
というのも,ある程度の「権威性」のある立場で仕事をすると,避けて通れない問題があります。
それは「他の人の発言」です。
私の発言は,医師のプライドを大きく損ねたのでしょう。
なぜなら,医師は自分の判断で薬を処方しました。ところが,患者の私から,薬剤師の意見に基づいて,医師にもの申したワケです。
言い換えると,医師の自分よりも薬剤師の意見を,患者の私が重要視した,ということになります。
その結果,医師はヒステリーになりました。
まあ,面白くないでしょう。今ならこの気持ちは分かります。
私は士業の資格を取るまでに2年半。
必死で勉強し,資格取得後も10年以上,この業界で働いてきました。
それなりの知識経験は持ち合わせています。
ところが,実際に相談に訪れる人は,相談内容に対する私の回答に…
「でも,【近所の人が/身内が/テレビが】,こう言ったんだよね~」
例えば,身内の弁護士が…というのはわかります。
けれど,近所の何ら資格も知識も経験も無い人の意見を重用する,その発想はどうにも理解できません。
そこで,このような人に遭遇したらどうすればいいのでしょうか。
仏の顔も三度,ということわざがあります。
寛容な仏様ならば,三度でしょうが,私は非常に気が短いので1回だけです。
つまり,一言だけ尋ねます。
「では,その近所の人は法律の資格を何か持っているのですか?」
すると,その人は
「いえそんなことはありません」
と答えます。その先が重要です。
「いえそんなことはありません。【けど…】」
と一言でも逆説の接続詞が出てきたら,それまでです。
その人は,きちんと資格をもって,それなりの知識経験を持つ専門家の意見よりも,近所の人の意見の方が大切なのです。
その人にとって大切なのは,専門家の【正しいアドバイス】に従うよりも,【近所の人の意見を承認してもらう】ことなのです。
はたして,このような人は,顧客なのでしょうか。
はっきり言います。顧客の皮を被った,粗大ゴミです。危険物です。
危険物の処理は,大変なので気を付けなければ行けません。
つまり,
「専門家の正しい意見よりも,近所の人の意見」
を聞き入れた結果,大きな問題を抱えたとします。
それを,後から
「なんでアドバイスしてくれなかったんですか?」
と,こちらに責任追及してくるのです。
…危険物でしかありません。
絶対にこんな人を顧客として迎え入れてはいけません。
今回はひとつの例ですが…おそらく、これまでにあなたは何度も
「顧客にして後悔した」
体験があるはず。
そういった人たちの「徴候」をまとめて、共通化してください。
その共通する特徴を見せる人には近づかないで下さい。近寄らせないで下さい。