思いをそのまま発信する安っぽさ

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思いをそのまま発信する安っぽさ
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今年の母の日、Facebookに、
「感謝」
という言葉とともに特別のアイコンを実装。
「いいね」とか「超いいね」などと一緒に「感謝」というボタンを押せるようになりました。
それを知って、なんともうんざりする気分になりました。
一日限定だったようで、安堵しています。

わりと最近使われるようになった言葉に
「意識高い系」
などというものがあります。
元々は本来の「意識が高い」人を指したのでしょう。
ですが、今となってはネガティブな意味のネットスラングとなっています。

まだ辞書には出ていないので、様々なネットの記事から適当にまとめると、
「過剰に自己顕示欲が高い人」
「自己研鑚に余念がないように見せかけているだけで空振っている人」
「他人を気遣っているように見せかけて、実はただの上から目線」
というような感じでしょうか。

その中の1つに、
「感謝」
というものがあります。

筆文字で
「感謝」
と書いてSNSに投稿してみたり、

「今日も1日ありがとうございます」
といった感じでやはりSNSに投稿してみたり。

ウザい例だと、はがきやFAXで届くこともあるそうです。

「感謝」
とか
「ありがとう」
という言葉のバーゲンセールです。
言葉を言うだけならタダです。
けれど…価値は暴落します。
今となっては、これらの言葉はティッシュペーパーよりも薄っぺらくなってしまいました。

人に何か感謝している…という自己陶酔を、SNS上でしているだけでしょう。
実に気持ちが悪いです。
そんな人を
「意識高い系」
と揶揄されるのも、ある意味しかたがないのかもしれません。

感謝の念が本当にあるのであれば、
「感謝」
を何らかの形に変えて伝えなければいけません。

感謝の念を
「感謝」
と言ったり書いたりするだけなら、幼児でも出来るでしょう。

感謝を
「感謝【以外】」
の言葉、あるいは行動で伝えることで、感謝の念は伝わるのではないでしょうか。

先日、あるニュース番組を見ていました。
ニュース番組…といっても、半分以上はバラエティ要素が多いエンタメ系です。
ただ、最後の10分程度は、本当にニュースだったり、天気予報だったりします。
ということで、最後のニュースを見ていました。

その日は、スポーツ中継のために、番組放映が1時間10分繰り下げ。
時刻にして、深夜0時30分少し手前くらいでした。

最後に、安住紳一郎メインキャスターが、実に印象深いことを言っていました。
「本当に遅い、この時間まで見てくださったあなたが、本当のお客様です」

生放送故に、限られた時間の中で、ひねり出したこのセリフ。
「遅い時間まで見ていただき、本当に【感謝】です」
という言葉だったら、伝わるものは何もなかったでしょう。

今となっては、「感謝」という言葉がインフレする中で…それでも、1時間10分遅くなっても最後まで付き合った視聴者に対して、感謝の意図を示したい。
その結果が、上記のセリフだったのではないでしょうか。
さすがに、キャスターです。言葉の使い方を心得ています。
「書く」と「話す」では、まったく違うのですが、同じ「言葉を扱うプロフェッショナル」として、見習わなければなりません。

これが、感謝を別の形に置き換えた言葉で伝える例です。

もう一つ。
感謝、を口で言うよりも、行動して示した例があります。

先日、ある絶版になりかけている本を注文した時のことです。
注文自体は通り、「入荷次第発送」とのことでしたが、結局入荷できなくて、注文キャンセルになりました。
その結果、こんなメールが来ていました。

日頃より楽天ブックスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
以下のご注文商品につきましてご連絡申し上げます。

商品名 :ハイパワー・マーケティング [ ジェイ・エイブラハム ]

先日は、数多くあるショッピングサイトの中から、私ども楽天ブックスでご注文いただきましたのに、商品をご用意できず、誠に申し訳ございませんでした。

ご迷惑をおかけしたお詫びのお気持ちと、今後のご利用にお役立ていただければと存じまして、楽天スーパーポイントを50ポイント付与させていただきました。

今後のご利用にお役立ていただければ幸いでございます。
何とぞ、深いご理解と変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

たかが、50ポイントです。
50円分です。
ですが、金額でも価値の問題では無いのです。
厳密には「感謝」ではなく「お詫び」ですが、
「気持ち」を「形」に変換する、という一つの例として紹介しました。

単純に、
「安物でもいいので、何かあげればいい」
というテクニックの問題ではありません。
気持ちを形にする、という一つの例です

今の時代、情報過多も酷い状況において、言葉の価値はインフレしています。
だからこそ…言葉だけではなく、行動や形に変換することを考えてみてください。

でないと、
「意識高い系」
とカテゴリされて、痛い目線で見られることになるかもしれません。

定義【コモディティ化】
類似の商品の機能・品質に差がなくなり、どれを買っても同じだから安い方がよいという状態になること。

これを別の見方をするならば,これまでとても価値があったものが,だんだん個性を失って劣化し,安っぽくなっていく様子だ,とも言えます。

世の中,様々なものがコモディティ化しています。
いろんな商品やサービスが,どんどん安売り競争に突入していきます。

…が,今日は,商品・サービスのコモディティ化ではなく,違うもののコモディティ化の話です。

それは,
「言葉」
です。

言葉のコモディティ化…別の言い方をすると,劣化して風化しつつあるように感じます。

劣化・風化する言葉とは,言い古されて飽々することでもあります。
これをコピーに使うと,大きな弊害が起きます。

なぜか。
飽々した言葉を使うと,
「あ,またコレ系ね」
と思われて,すぐに注意を逸れるからです。

広告,コピーは,見てもらわないことには話になりません。
ですが,この劣化した言葉を使うと,それが「注意を逸らすトリガー」になるのです。

人は,特定の言葉に反応します。
例えば,私だったら「カピバラ」という言葉にはどうしても反応してしまいます。
ここでの「反応」とは,思わず注意をひかれる,ということです。

これの反対の減少も起きます。
劣化した言葉を使うとそれを見ただけで,反射的に逆に注意を向けないようにしてしまうのです。

以下,いくつかの劣化した言葉を紹介します。
くれぐれもコピーには使わないようにご注意下さい。

1.安心
これについては,これまでにブログで書いてきました。
多くの人が「安心」とばかり使うので,同じ「安」の文字でも,安っぽさばかりが目立ちます。

冷静に考えてみれば,「安心」を売りにできる商品というのはどれだけあるのでしょうか。

コンビニに行って,
「このお茶は,毒が入っていませんので安心です」
と書いてあったら,そのお茶が欲しいと思うでしょうか。

他所の国ならばともかく,日本においては,
「安心」
は,あって当たり前のものです。

本当に「安心」を売りにしたいのならば,別の表現を使うべきでしょう。

2.成功/成功者
これも,完全に劣化しています。

自己啓発から発展した「成功哲学」が流行った時期がありました。
その名残で,未だに「成功」を謳う広告をみかけることがあります。

では,成功とは何でしょうか。
プールサイドでドリンク片手に過ごす日々のことでしょうか。
それとも,札束を積み上げることでしょうか。
美女を何人も侍らせることをいうのでしょうか。
高級外車を街中で走らせて,多くの人を振り返らせることでしょうか。
あるいは,年収1000万円とか,年商1億円といった,「誰もが夢見る」数字に到達できることでしょうか。

別に,これらのことが悪い,と言いたいわけではありません。
本気で,これらのことを実現したいならば…本気で,これらのことが実現できれば成功者だと思えるのならば,目指せばいいだけの話です。

ただ,これらの列挙したものは「テンプレ」ではないでしょうか。
テンプレ…テンプレートとは,いわゆる定型文を意味します。
つまり…決められた,与えられた,押し付けられた安っぽい成功だということです。

そんなものに…どれだけ勝ちがあるのでしょうか。

成功とは何か,については,このブログで過去に書いてきました。
詳細はそちらをご覧ください。

安っぽく成り下がった「成功」とか「成功者」という言葉を使ってしまうことで,商品やサービスまで安っぽく成り下がってしまいます。
具体的に言葉にできなくとも,そういったテンプレ的な「成功者」は飽きられているのではないでしょうか。

3.感謝
これも,本当に劣化してしまっています。とりあえず口にしておけばいい…という感じになっています。
これについては,一話まるごとつかって解説したので,そちらをご覧ください。

4.笑顔
コピーを書くときには,具体的に描写をする,というのが私の信条です。
例えば,
「お客様が喜んだ」
と書くよりも,
「うつむいていたお客様が(中略)笑顔になった」
のほうが,具体的ではあります。

ですが,今となってはこの「笑顔」という言葉もコモディティ化が激しくなってしまいました。

単に「喜ぶ」とか「嬉しい」といった言葉の類義語として,代わりに使われ続けた結果です。

「お客様の笑顔のために…」
といった,企業スローガンを目にするようになって,ますます劣化しつつあります。

残念ながら,言葉も消耗品となる時代です。
特に,最後の「笑顔」などは,まだまだ必要とする,使える言葉だったはずです。
しかし,使う側が安っぽく,思いも込めずに使われ続けた結果,劣化が激しくなりました。

今回は特に劣化が激しい4つの単語を紹介しました。
ですが,ここには入れなかった言葉でも,言葉「だけ」で何とかしよう,上手く言いくるめよう,という意図が混じった使い方をする限り,安っぽさはどうしても抜けません。

逆説的ではありますが,言葉とは言うものではありません。
「見せる」
ものなのです。

伝えたいメッセージがあるならば,それを言葉を重ねて伝えるよりも,行動で見せたほうが,ずっと伝わります。
こればかりは,何百年経とうと,変わらず,劣化することもないでしょう。

あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平

追伸
売上を上げようと,がむしゃらにがんばってきたけど…疲れてきた。
そんなあなたは,一度こちらをご覧ください。

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