昨日は肯定の威力という内容で書きました。
今日は反対に否定の威力ということで思うことを書いていきます。
…と言っておきながら,実は「否定」ではありません。
そもそも否定とは何でしょうか。
例えば,ある会社において。
有能な女性スタッフがいたとします。
彼女はその課で誰よりも結果を出しています。
しかし,昇進していくのは男性ばかり。
課長は女性蔑視主義で,女性は無能だから仕事はできないと思い込んでいます。
…合法か違法かはさておき。
これが否定するということです。
女性という性だったり,あるいはこの女性本人の人格や能力を否定しているということになります。
あるいは。
ある人が起業しようと思っていたとします。
その思いを人に話したら,
「どうせおまえなんて起業したところで3ヶ月もせずに倒産するだけだから止めておけ」
言われたとします。これが否定する,ということです。
なので,このような「本来」の否定とは違うのですが,否定「のような」感じにすると,非常に威力を発揮します。
例えば。
「今の時代は,野菜に栄養素がないからサプリメントで栄養を補うべきだ」
と思って,サプリメントを飲んでいる人がいるとします。
そんな人に。
「今の時代は,野菜に栄養素がないからサプリメントを飲めばいい,などという思い込みをしていませんか?」
などというコピーは,注目せずにはいられないでしょう。
あるいは。
「ネット集客はコストが安いと思っているあなたへ。実はネット集客はずっと高いということを知っていましたか?」
などと書かれたらどう思うでしょうか。
見込み客の思っていること,考えていること,観念,信念といったものと反対,相反すること,相容れないことを書くと,
「否定されたような感覚」
になります。
だからこそ,非常に注目を浴びるのです。
なぜでしょうか。
「人は誰もが正しく在りたい」
という強い思いがあるからです。
「自分が間違っていたとは認めたくない」
のです。
だからこそ,
「あなたの考え,間違っていますよ」
…と言われた【ように感じる】コピーには,最後まで読んで,
「いや,このコピーの方がおかしい。私が正しいのだ」
と思いたいのです。
これが,否定の威力です。
注目を惹き,最後まで読ませる力を持つのが否定です。
もちろん,使いどころが非常に難しいものでもあります。
例えば。
上記の例である
「ネット集客はコストが安い」
と信じている人に,
「実は違う」
と理解させて,その上でアナログのDMなどに切り替えさせるのは本当に大変です。
サプリメントを摂ることが必要だと信じている人に,
「サプリメントではなく,この健康茶を飲めばいい」
などと言っても,簡単には買ってもらえないでしょう。
相手の考えを真っ向から相反する考えをぶつけ,なおかつ信頼を得て,買うという行動まで結びつけるのは非常に難易度が高いと言えます。
それでも,コピーライティングにおける,
「まずは読んでもらうこと」
という最初の大きな関門をあっさり突破できるのが,この否定の威力です。
最後に。
使いどころを間違えると,その威力がそのまま自分に降りかかってきます。
例えば,非常に有名なコピーですが,長野のエルハウスという工務店が
「家はまだ買うな!」
というコピーでチラシを作り,空前の反応率をたたき出し,かなり売上を伸ばしたのだとか。
それを表層だけマネした他の工務店はどうなったでしょうか。
文字通り,家は買ってもらえなかったそうです。
何で
「家はまだ買うな!」
なのか。
そこに整合性がないと,この否定の威力がそのまま自分に降りかかります。
難易度の高いコピーと言うことになるので,使いどころは気を付けたいところです。