スポーツ中継を見ていた時のことです。
テレビから電子音による、アラームのような音が流れました。
一瞬、ドキッとして、「地震だろうか」と不安な気持ちで慌てて画面を確認。
そこには、気象警報の字幕が出ていました。
今日もひどい雨が続いていたので、気をもみながら次の表示を待つこと、数秒。
「気象警報は解除されました」
とのこと。
少々イラっとしました。
解除だったら、物々しい電子音を鳴らさなくてもいいのではないか。
そう思ったのです。
これは、何かで聞いた話です。
うろ覚えですので、正確ではないかもしれません。
ラジオによる、この警報音は、地震では震度5未満では鳴らさない、というルールのようです。
なぜか。
ラジオの場合は、運転中に聴くことが多々あります。
運転中に、みだりに警報を鳴らすと、ドライバーの注意を逸らせて、危険だから、とのことです。
ただ、震度5以上ともなれば、ドライバーも即座の判断が必要になることもあるから、警報音を鳴らすのだとか。
さて、今日は注目を集める代償についてです。
イラっとするテレビCMがあります。
…コピーライターの視点で考えると、イライラするCMの方が多いくらいです。
エゴむき出しで、自分のことしか考えていない、広告主やCMの作り手の醜悪な内面が反映されているかのようなCMはたくさんあります。
ですが、今日のテーマでいうならば、圧倒的にイラッとするCMが1つあります。
それはビ◯クカメラのCMです。
このブログをご覧の方は、私がヨドバシカメラが好きだ、ということはご存知かもしれません。
ビックカメ◯は、ヨドバシカメラの競合店だから…という話ではありません。
単に、ビックカ◯ラのCMが、なんとも嫌でしかたがないのです。
なぜか。
ビッ◯カメラのCMを見たことがある方なら、ご存知でしょう。
CMの最初の瞬間に、携帯電話のアラームのような電子音が2回鳴るのです。
好きか嫌いか、良いか悪いかは脇に置きます。
現代人は、携帯電話がない生活は、考えにくい状況にあります。
全米屈指のコピーライターで、億万長者メーカーと名高いマーケティングコンサルタント、ダン・ケネディは、今の御時世において、携帯電話を持っていなければ、Eメールアドレスもないそうです。
それでも、業界最高峰の重鎮として君臨し続けているのですが、ある意味それは彼の独自スタイルを貫いたからです。
なかなかほかの人はそうも行かないでしょう。
私などは、ダン・ケネディの影響を受けているので、携帯電話はあまり好きではありません。
未だにPHSを使い続けており、スマートフォンは持っていません。
それでも、PHSは持っていて、使っている…と言えます。
学生時代は、ずっと携帯電話を持つことが嫌で、避けていました。
周りから、
「携帯電話、買わないの?」
「買いなよ」
と散々言われても、
「見えない鎖で繋がれているような気がするから嫌だ」
と拒否。
当時は気ままな学生だったので、困るのは私ではなく、親や友人だったのでしょう。
ですが、社会人になってから、諦めて携帯電話を買いました。
すると…やはり
「見えない鎖で繋がれているような気がする感覚」
があり…いつの間にか、それが当たり前で、自然になり、意識することすら無くなりました。
ですが、その見えない鎖の影響力は存在しています。
それが、電子音に反応する習慣です。
何かをして集中していても、電子音がなると、ついそちらに注意力が持って行かれます。
バイブレーションの振動や、音にも、つい反応してしまいます。
なぜなら、
「そういった音に反応する」
ように、社会から教育されているからです。
多かれ少なかれ、メールや電話には、即座に反応しなければいけない…というルールがあるかのような感じがしているのではないでしょうか。
その結果、電子音のアラームやバイブレーションには、注意を引く作用があるのです。
それを悪用したのが、ビックカメ◯のCMです。
注目をして欲しいがために、電子音を鳴らします。
ですが、電子音を鳴らした結果どうなるでしょうか。
誰かからの電話やメールを待っていた時に、電子音がなり、
「お!!」
と思ったところ、CMだった。
イラッとする人は多いのではないでしょうか。
今の時代は、注目を引くのが難しい時代になりました。
それだけ人は注意散漫になり、さまざまな情報に溢れ、集中力は低下しています。
だからこそ、コピーライターは、これまで以上にキャッチコピーで注意を惹くのは難しくなっています。
広告の反応率も下がっており…かつ、広告費も高騰傾向にあります。
それでも、注目を引く、というだけなら、携帯電話の音を鳴らせばいいのです。
ですが、それをやってもいいのでしょうか。
注目を引くことは、目的ではありません。
手段です。
CMであれば、CMの内容を見てもらって、売上につなげることが目的でしょう。
ですが、不用意に注意をかき乱してイラッとさせ、反感を持たれたら…売上に繋がるでしょうか。
注目さえ引いて、あとはイラッとされようと、無意識に刷り込むくらいまで何度もCMを流し続ける、という手もあるでしょう。
ですが、効果的だとは言えません。
意表を突くこと、強制的に注意力を奪うこと。
それを行うことで、どれだけ反感も買うか、その代償は考えておくべきでしょう。
私たちは、お客様に価値を提供して喜んでもらうのが仕事です。
嫌がらせをすることを目的に仕事をしているわけではないのです。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平