マーケティングにおいて、非常に重要な考え方の一つとして、USPというものが挙げられます。
USPとはユニークセリングプロポジションの略で、ざっくりと訳すと
「他にはない独自の売り」
となります。
例えば、有名な例として、ドミノ・ピザの
「熱々のピザを30分以内にお届けします。間に合わなければお代はいりません」
というもの。
多くのマーケティングセミナーや書籍などで扱っています。
そして。
「ああ、マーケティングって難しい…」
と思れる大きな要因の1つでもあります。
例えば。
ダン・ケネディの著書
「究極のマーケティングプラン」
において、最初に扱っています。
そして、最初からつまづくのです。
USPを探そう、探そう、と思ってもなかなか見つからず、
「ああ、マーケティングって難しい」
なるのです。
そこで。
USPって、本当に必要なのでしょうか。
もう一度書きます。
USPとは
「他社にはない独自の売り」
です。
つまり、大前提として
「他社と比較した場合に、自社を選んでもらうためのもの」
ということがUSPの目的となります。
ならば。
そもそも他社との間で競合優位性に問題が生じなければUSPは必要ないということになります。
例えば。
その地域で1軒しかない診療所。
他との競合は問題になりません。
もちろん、他の地域に行く人もいるでしょうが、単に立地だけで選ぶ人も一定数いるからです。
あるいは。
紹介システムを講じて、新規顧客の大半を紹介で獲得しているビジネスであれば、USPは入りません。
競合他社に勝つかどうか、というUSPではなく、紹介者の被紹介者に対する信用で成約できるからです。
非常に極端な例ではあります。
ただ、そもそもUSPは必要なのか、という前提に立ってみた時に、
「ああ…USPは見つからない」
と嘆いて、そこで思考が止まってしまうよりも、USPではなく他のマーケティング施策を講じたほうが、効果は出るかもしれません。
例えば。
上記のドミノ・ピザの
「熱々のピザを30分以内にお届けします」
というもの。
USPとしては非常に優れているのですが、その裏を分析してみると、シンプルなマーケティング施策が見えます。
立地としては、大学のすぐそばです。
大学の学生をターゲットに据えたのです。
そして。
大学の体育会系部の部室にチラシを撒いたのです。
たくさん体を動かして、お腹がすいた学生に
「30分以内」
を謳ったのです。
さらに。
当時、大学生の間で、とあるものが流行していました。
…それは、マリファナです。
マリファナを吸うと、非常にお腹が空くのだとか。
お腹が空いている…でもマリファナ吸った後だけにぐったりして食べ物を買いに行く気力もない…そんな人を相手にピザを売ったのです。
別に、特別の素材を使っているわけでもありません。
一言も「おいしい」と言っているわけでもありません。
単に腹が減った人に、さっさと届ける…というそれだけです。
まさに、「砂漠で水を売る」という非常うにシンプルで理にかなった販売戦略なのです。
もちろん、
「間に合わなければお代はいりません」
という要素も大きいのですが、その裏にあるシンプルなマーケティング施策だけでも結果は出ます。
この強力なUSPがあればこそ、世界ナンバーワンのピザチェーン店を築いたのですが、世界ナンバーワンを目指さないならば、そこまで強力なUSPが必要とは限らないのです。
USPというのは、ビジネスを一定期間続けて、それなりの実績を積み上げること。
そして、その上でたくさんの顧客に尋ねて回って、他にない自社の強みを探す、という手法を取ります。
つまり、新規ビジネスにおいてUSPを探す…というのはある意味矛盾しているのです。
「自社の強みが見つからない」
のであれば、自社の提供できるサービスすべてを提供して下さい。
一つ一つ、小さなマーケティング戦略を実行して、より多くの顧客に、よりたくさんの種類の商品やサービスを提供して下さい。
その上で、顧客と話をしていく中で、改めてUSPを探してみてください。
「ないものを探す」
ことほどつらいものがありません。
他にできるマーケティング施策はあるはずです。