先日、テレビ報道にて日本マクドナルドのカサノバ社長が出演していました。
母親たちの意見を商品開発に取り入れ、そのメニューを発表したとのこと。
社長自ら日本各地を周り、多くの母親に意見を聞いたところ、
「もっと野菜を使ったメニューを作って欲しい」
という要望があったのだとか。
異物混入問題による信用失墜の結果、既存客を大量に流出させたマクドナルド。
テレビで、アナウンサーの
「これで既存客を取り戻せますか?」
という質問に、
「客のニーズにこたえていけばマクドナルドは再建できる。100%責任を持ってやります」
という社長の回答が印象的でした。
…一昔行ったコミュニケーションの訓練で、よく使われる技法です。
質問に対して全く回答になっていません。
揚げ足とりのようでもありますが、これがマクドナルドの現状なのでしょう。
さて。
今日はこの
「お客様の声」
です。
テスティモニアル(証言)広告の基本中の基本であり、
「広告で何を載せるのか迷ったらとりあえず載せとけ」
的な、非常に重要な要素です。
ただ、使い方を間違えると大惨事を引き起こすこともあります。
テスティモニアル広告として使うのであれば、それほど痛い目にはあいません。
…が、今回のマクドナルドのように、顧客のニーズやウォンツを探りだす「リサーチ」として活用する場合、大惨事になりうるのです。
なぜなら。
お客様は、嘘は言わない代わりに、本当のことを言うとも限らないからです。
その嘘ではないけど本当でもないことを鵜呑みにして、社運をかけて新製品を開発、プロモーションに、多額の金額をつぎ込んで…空振りしたら、目も当てられません。
具体的に掘り下げてみます。
例えば、マクドナルドに「もっと野菜を使ったメニューを作って欲しい」と言った、たくさんの母親たち。
これは決して嘘を付いているということではありません。
ですが、よくよく冷静に考えてみましょう。
健康志向を考えた「その時点」で、マクドナルドは選択肢から外れます。
何が悲しくて、健康を意識してマクドナルドに行かなければならないのでしょうか。
確かに「もっと野菜を使ったメニュー」は「あったほうがいい」でしょう。
そのほうが「より健康的」であることは言うまでもありません。
だからといって、彼女たちは「ではその野菜を使ったメニューが売りだされたら、それを食べに行く」とは一言も言っていないのです。
カサノバ社長は、マクドナルドの強みは、
「たくさんのメニューが有ること」
「いつでもつくりたてで熱々だということ」
と言っていました。
マクドナルド以上にメニューが有るハンバーガーチェーン店は珍しくないでしょう。
それに、モスバーガーのようにオーダーを受けてから作る店であれば、作りたてて熱々です。
カサノバ社長が挙げたこの2つは、別にマクドナルドの強みでもなんでもありません。
マクドナルドの強みは、立地と仕組みです。
マクドナルドは、「ハンバーガー店ではなく不動産屋だ」と言われるくらいの不動産戦略。そして、どんなアホでも戦力にできるシステムによりコストダウンをして低価格で勝負するところに強みがあるのです。
そのポジショニングだからこそこれまでやってこられたのです。
ところが、健康志向を打ち出すことで、別の競合が視野に入ってきます。
いうまでもありません。サブウェイです。
サブウェイは、「ダイエット商品」として成功を収めたチェーン店です。
どう考えてもマクドナルドがサブウェイを「健康志向」というブランドで上回ることは現状においてできません。
全国の母親たちも、健康志向を意識したら、マクドナルドではなくサブウェイに行くことでしょう。
強みもわかっていなければ、競合もわかっていない。
そんな人をトップに据えたマクドナルド。
さて、よみがえる日は来るのでしょうか。
以前のブログにて「かなり厳しい」という論調で書きました。どうやら、この論調このまま変えずに済みそうです。
では、マクドナルドはどうするべきなのでしょうか。
ひとえに、お客様の声の使い方が間違っているという他ありません。
どのようにすればいいのかは…少々長くなったので続きは明日にでも。
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