ある、経営者向けの、会員による完全紹介制、異業種交流会の場でのことです。
招待されて参加しているゲストの紹介が、司会よりありました。
会社名と個人名、業種や事業内容が、司会により読みあげられます。
会場のスクリーンにも表示されます。
ところが、参加予定のゲストのうち、半数が遅刻により、その場にいませんでした。
そこで、まずはその場にいたゲストが壇上に上がり、一礼した上で司会から紹介されます。
次に、その場にまだ来ていないゲストの情報について、司会がその場で読み上げます。
しばらく時間が経過して、遅れて到着したゲストが紹介されました。
そこで、壇上に上がり一礼して、司会から紹介されました。
さて、ここまでの流れがなんとなくつかめたかと思います。
その上で、ちょっと考えてみてください。
私にしてみれば、この流れは致命的に問題だと感じています。
それは何でしょうか。
正解かどうかはさておき、一度あなたなりに、どこに問題があるのか考えてみてください。
さて。
改めまして、アップスタッツ経営研究会の飯山です。
…たまに、直接会う方には「アップスタッツとは」という話をしているのですが、ブログ等では説明してきたことがなかったことに、気が付きました。
そこで、今更過ぎますが、先ほどの事例と関連して、アップスタッツとは何か、について紹介します。
先ほどの事例に、何ら問題意識を感じなかった方は、新たな視点で最後までご覧ください。
アップスタッツとは、英語でアップ(UP)と、スタティスティックス(statistics)を合わせた言葉です。
スタティスティックスとは、統計値という意味になります。
アップスタティスティックスだと、さすがに言いにくいので、アップスタッツ、と表現しています。
数字を測定して統計していくと、それが上がっていく(UP)ということから、「高い生産性の実現」という意味で使っています。
例えば、営業成績が先週90万円、今週100万円、ということであれば、これはアップスタッツです。
逆に、先週90万円、今週80万円だと、ダウンスタッツ、ということになります。
このスタティスティックス(以下スタッツ)は、数字で測定できる必要性がありますが、必ずしもそれが売上などに直結する必要はありません。
例えば、経理担当が、先週の帳簿の仕訳を処理した件数が90件、今週が100件であれば、アップスタッツです。
先週90件、今週80件であれば、ダウンスタッツです。
あるいは、メルマガを書いている人がいるとします。
メルマガを配信して、コメントの返信数が、先週20件、今週21件だったら、アップスタッツです。
先週20件、今週19件だったら、ダウンスタッツということになります。
アップスタッツ経営研究会は、経営において、高い生産性を実現するためにどうするか、ということを目的にしているのです。
アップスタッツにするために、絶対にやってはいけないことがあります。
それは、ダウンスタッツを優遇することです。
この「優遇」とは、金銭的なものだけではありません。もっと幅が広いものです。
人からの注意を向けられる度合い、時間を割く度合いも当然に含まれます。
例えば、営業会議を開くとします。
トップセールスマンが、今週も売上目標を大きく達成しました。
一方、成績の悪いセールスマンもいます。そこで、セールスマネージャーが、その成績が悪いセールスマンを30分掛けて、説教して怒鳴り、体育会系的な指導をするとします。
会議時間が60分のうち、40分を、そのダメなセールスマンを鍛え直すために費やしたとします。
すると、全体の売上は下がる傾向にあります。
なぜでしょうか。
トップセールスマンは、誰よりも良い成績を出して、称賛されるべきなのにスルーされているからです。
そして、その注意と時間は、成績の悪いセールスマンに向けられていることになります。
これが、ダウンスタッツを優遇する、ということです。
身も蓋もない表現ですが、
「成績が悪いほうが、より構ってもらえる」
のに、なぜ良い成績を出さなければならないのでしょうか。
これが原因です。
さて、冒頭の話に戻ります。
時間を遵守して会合に参加したゲストは、壇上に上がって一礼します。
紹介されるのは1回です。
遅刻した人は、その場で1回紹介されました。
その後、到達した後もう一度壇上に上がって紹介して一礼です。
遅刻した人のほうが紹介される回数が多いのです。
実は、この日は、3回に分けて紹介されたのですが、3回目の人は、コメントすら許可されていました。
遅刻すればするほど優遇されているのです。
全体の前で、自社をPRできているのです。
私が、時間通り参加したゲストだったら、不公平感を抱くでしょう。
この司会を担当した者について、前から無能で空気が読めない人だと思っていましたが…
ここまで悪辣なことをする人だとは思いませんでした。
それはさておき、ダウンスタッツを優遇すると、全体の生産性は下がるのです。
ここでのスタッツとは、「時間を遵守できる人」をアップスタッツと捉え、時間を守れない人を「ダウンスタッツ」と捉えています。
この司会の愚行により、この会は、遅刻者が増えたり、入会率が下がっていくことでしょう。
それはさておき。
この発想はマーケティングにどう活かせばいいのでしょうか。
非常にシンプルです。
VIPを優遇すればいいのです。
たったこれだけです。
お金をたくさん使ってくれているVIPクライアントは、単純にアップスタッツなのですから、アップスタッツを優遇すればいいだけの話です。
決して、見込み客や、新規客をVIPよりも優遇してはいけません。
アップスタッツ。
高い生産性の実現の為には、「アップスタッツな人」を大切にする、という思想が根底にあります。
誤解を招きかねない表現ですので、何度か読んでみてください。
「人の命の価値は平等」
です。
ですが、
「人の価値は平等ではない」
のです。
新規顧客とVIPを、同等に扱うのは、VIPに対する不当な差別です。
あるいは、新規顧客に対する不相応な優遇となります。
そんなことをすれば…そのVIPは黙って、あなたの元から去っていきます。
くれぐれもご注意ください。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
飯山陽平