なぜ強引な売り込みを掛けてはいけないのか

なぜ強引な売り込みを掛けてはいけないのか

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私が、今よりもまだ「おとなしかった」頃のことです。北海道に住みたい、という夢を叶えるべく、誰一人知り合いがいない、今の町へ単身で引っ越してきてから、数カ月後のこと。
ある人が事務所を訪ねてきました。

当時のSNSであるミクシイからメッセージが来て、

「地元の司法書士の先生にあいさつしたい」

とのこと。
文字通り、誰一人知り合いもいない状態ですので、

「まあ、いいか」

と思って、訪問を受けることにしました。
…これが、過ちでした。

その人は、生命保険のセールスマン。

ミクシイに出ている私の個人情報を拾って、勝手に生命保険のプランを作成。

「これは別に営業じゃないですからね」

と5分おきに言いながら、たっぷり1時間セールスプレゼンテーションを展開して行きました。
たぶん、当時ほど「おとなしくない」今の私であれば、3分くらい我慢してから、事務所から追い出したでしょう。

ですが、当時はまだ周りに知り合いがいないことを「心細い」というメンタリディだったで、この1時間を「甘受」するしかなかったのです。

定義【甘受(かんじゅ)】
やむをえないものとしてあまんじて受け入れること。

今日は、非常に当たり前の話をします。

それは、

「人にされて嫌なことをするのはやめよう」

という、倫理の教科書にでも出ているような話です。
誰だって、嫌なことをされて嬉しいはずがありません。

当たり前です。

なんで、そんな嫌がらせをしてしまうのか。

それは…いつのことか、「忘れてしまう」からです。
相手を気遣う気持ちを忘れてしまうのかもしれません。

あるいは、「もしかしたら、これは相手が嫌がるのかもしれない」と可能性を考えることを忘れてしまうのかもしれません。

何よりも、「私がする話を聞かないなんて、ありえない」という驕り高ぶった気持ちなのかもしれません。

上述の保険のセールスマンは、どういうつもりで、

「司法書士の先生にあいさつ」

といいながら、当時28歳独身男性に、生命保険の…養老保険を押し売りしてきたのかはわかりません。

ですが…この人のやったことで、何が問題だったのでしょうか。

それから数カ月後。

ある人からの紹介、ということで連絡がありました。

その「ある人」とは、私自身がお世話になった方であり、その方はとても気さくで優しく、素晴らしい方です。

今では、とても社会的地位もある方です。

そんな「ある人」から紹介を受けたと称した方とのやり取りがこちら。
その人「あの◯◯さんから紹介を受けて、ご連絡させていただきました」

私  「ご用件はなんでしょうか」

その人「一度、司法書士の先生にあいさつしたいと思っております」

私  「お仕事は何をなさっていますか?」

その人「生命保険を扱っています」

私  「わかりました。訪問はお断りします」

その人「え?」

私  「訪問はお断りします。来ないで下さい」

その人「えっと◯◯さんからご紹介を受けているのですが。ごあいさつだけでもだめですか?」

私  「そうやって、ごあいさつだけ…といって、1時間たっぷりと売り込みをし続けた生命保険の営業の人がいるのですよ。あなたに罪はないですが、生命保険の営業の方から『ごあいさつ』はお断りしています」

その人「……」

単に生命保険を目の敵にしていたわけではありません。

私の記憶が正しければ、この出来事があってから数カ月内に、お世話になったある方から養老保険に加入しました。
ですが、冒頭の出来事のおかげで、何ら悪いことをしていないにも関わらず、紹介があるにも関わらず、来訪拒絶の憂き目にあった人がいるのです。

セールスをすること自体は、悪いことでも何でもありません。

私自身はセールスコピーライターとして、良いものを販売するのは素晴らしいことだし楽しいことでもある、と思っています。

また、私自身がセールスを受けることも、割と好きな方です。

欲しいとは思わなかったものでも、上手いセールスを見ると、思わずそのセールスの上手さにリスペクトして買ってしまうことはあります。

ですが、騙し討ちはダメです。

嘘はいけません。
「あいさつ」は「あいさつ」です。

1時間のセールスプレゼンテーションは、あいさつとはいいません。
このように騙し討ちをすることで、他の人に迷惑をかけることもあるのです。

今の時代は、当時よりもSNSが発達しています。

その結果…よりこのような心ない行動をしでかしやすいツールが発達したことも意味します。
例えば、ある交流会で形だけの名刺交換をしたことがある人がいます。

形だけ…というのは文字通りです。おそらく話をしたのは数秒でしょう。顔も名前も覚えられません。

だからこそ、Facebookで交流を…と思って、

「今日ごあいさつさけしました◯◯です。Facebookでもよろしくお願いします」

と「友達申請」というのは、とても理にかなった行動です。
Facebook上でやり取りをすることで、お互いの理解が深まり、次に会った時に何らかの商談になるかもしれません。

ですが、商談の前に、まずはお互いの信頼関係構築のためにも、最低限の理解が必要でしょう。
その、友達申請の時に画面いっぱいに売り込みをかけるセールストークを展開したら…どんな気分になるでしょうか。

相手はどんな気分になると思うのでしょうか。
これが、Facebookのタイムライン上で展開されていたのを見たことがあります。

ある人(仮にAさんとします)はよく知っている人です。そのAさんに、友達申請をしたBさんがいます。

そのBさんの申請をAさんは承認しました。

すると、BさんはAさんに「承認ありがとうございます。弊社は〜」とここでセールストークを展開。売り込みを掛けていました。
それが、公開のタイムライン上のやり取りです。

「よくやるなぁ」

「セールスはここまでやらなければならないのだろうか」

「でもこんな無様なマネはしたくないな」

と思って、とりあえずそのBさんから友達申請が来ないようにブロックしました。

セールスは素晴らしいことです。

相手のニーズやウォンツにこたえるために必要不可欠なものです。

相手の問題解決ができれば、とても感謝される、尊い行為です。
にも関わらず、相手の気持を蔑ろにして、自分のことばかりをゴリ押しするから、

「セールス」

は嫌悪され、その尊さは失墜しました。
心ある人までが、その一部の心無い人のせいで、同じ「売り込みばかり掛けてくる迷惑な人」というレッテルを貼られる事態になりました。
おそらく、どのセールスも、きちんと相手のことを考えてから行われるならば、このような心あるセールスをする人まで蔑ろにされることもなかったでしょう。
あるいは、消費者保護基本法、特定商取引法等の消費者保護関連の法律が出来るのは、このような相手のことを考えずに売り込みばかりを掛けててくることで「被害者」が続出したからなのでしょう。

本当に相手のために…と思えるセールスを皆が行っていたら、こんな法案が必要になるはずがありません。
ほんのすこしでいいので…相手の気持ちを考えてセールスする。

そんな人が増えれば、世の中はもう少しマシになるのではないか…政府が必死で経済対策を取らなくとも、より景気が良くなるのではないか。

そんな気がします。

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