山手線の中でのことです。
ある法律事務所の広告を見かけました。
写真を撮れればいいのですが…山手線の中で撮影は,いろいろリスキーです。
正確ではないかもしれませんが,こんなコピーだったと思います。
「離婚・相続・債務整理は弁護士におまかせ」
相も変わらず,士業のコピーはホント,酷いものです。
なんでこんなコピーを書くのか。
その背景にあるのは,広告主の強欲さと吝嗇さが如実に反映されています。
単純に考えて,
「離婚」
「相続」
「債務整理」
は,別々のターゲットです。
同じ人がこの3つ全てに該当するはずがありません。
広告は,一度に1つのターゲットに,1つのメッセージが鉄則です。
一度に3つ済まそうとするから,こんな酷い広告になるのです。
これでは反応は見込めません。
ちなみに。
コピーライター向けのテクニック。
クライアントがこの「1つ」のルールに納得せず,どうしても一度にたくさんのターゲットにたくさんのメッセージを載せたいと主張してきたらどうすればいいのでしょうか。
言われるがままに,複数のターゲットに向けた広告を作れば,反応は得られません。
でも…このような聞く耳を持たない依頼主は,コピーライターを糾弾するでしょう。
原因は明らかに依頼主にあるのに,です。
こんな場合の対処法が1つあります。
今回の場合,
「じゃあ,リサーチのために,お客様に話を聴いてみたいと思います。この3つ全てに該当する人を紹介して下さい」
と言えばいいのです。
つまり,「離婚」「相続」「債務整理」全てをその弁護士に依頼した,という顧客を紹介して下さい,という話です。
本当にそれで紹介できるようならば,腹をくくるしかないでしょう。
話を戻します。
この広告コピーの,さらに酷いのは,
「弁護士におまかせ」
という表現です。
自分の事務所に依頼が欲しいから広告を出している…ハズです。
なのに,このコピーでは,どの弁護士でもいい,という話になります。
離婚なら離婚,相続なら相続等,その弁護士に依頼する理由もなく,ただ「弁護士におまかせを」では,反応しようがありません。
何とも酷い広告です。
きっと,この広告は,儲かって儲かって仕方がない弁護士が,友人の広告代理店に儲けさせて,経費を支出して節税したかったのでしょう。
ですので…広告を出して集客してしまうわけにはいきません。
「それっぽく見える」広告で,かつ,その広告で集客「してはいけない」という理由でもなければ,こんな広告にはならないでしょう。
ここまでが,コピーライターとして感じた,ひどい広告の話でした。
ここで終わってもいいのですが,もう少しえぐった話をします。
もしかしたら,この広告コピーは,文字通りの宣伝なのかもしれません。
すなわち,弁護士の職域を守るためのPRかもしれない,ということです。
例えば,離婚。
離婚協議書の作成は,行政書士でもできます。
離婚調停だったり,離婚裁判の「書面作成だけ」なら司法書士でもできます。
離婚は,必ずしも弁護士に依頼しなくてもいいのです。
あるいは,相続。
遺産分割協議書の作成だけなら行政書士でもできます。
遺産分割協議書を作成して,相続に寄る不動産の名義変更なら,司法書士でもできます。
相続税の申告や手続きは,税理士でもできます。
そして…弁護士はこれらの案件全てを行う権限があります。
債務整理も同じです。
140万円以内の和解交渉は司法書士でもできます。
自己破産申立ても,書類作成は司法書士でもできます。弁護士でなくともできるのです。
…だからこそ,食えない弁護士,年収200万円〜300万円というのがザラと言われる弁護士が続出している,その背景にあるのが,他の士業との競争です。
もちろん,市場(すなわち日本人の人口)が縮小して,弁護士が増えている以上,競合が増えつつあります。だからといって,弁護士同士で潰し合うのもどうか,ということで,他の士業にあてつけた,こんな広告コピーになったのかな…と推測できます。
いずれにしても,そこまで行くと,ある意味「広告」の定義から外れます。
広告の定義とは,Salesmanship in Print,すなわち,セールスマンのセールストークを文字にしたもの,です。
広告の本質は,宣伝でもPRでもありません。セールスです。販売です。
私達経営者は…その提供しているサービスは本当に顧客に貢献できるものであるあらば…自信を持って,どんどん売らなければいけません。
自尊心を満たすような…顧客ではなく自分の業界しか向いていないような,そんな宣伝をしている場合ではないのです。
一人でも多くの顧客に販売して,一人でも多くの顧客を幸せにしなければならないのです。
それが,あなたの仕事です。
なお。
広告コピーが酷いことと,弁護士の品性や技術とはまた別の話です。
念のため。
あなたがよりアップスタッツな明日になりますように。
セールスコピーライター 飯山陽平
追伸
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