なぜ人は広告を信じないのか…その現実

なぜ人は広告を信じないのか…その現実

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突然ですが、ここで問題。
「騙す(だます)」と「欺く(あざむく)」の違いは何でしょうか。

定義【騙す】
うそを言って、本当でないことを本当であると思い込ませる。あざむく。たぶらかす。

定義【欺く】
言葉巧みにうそを言って、相手に本当だと思わせる。言いくるめる。だます。

実に似たような定義です。
辞書を引くと、たまに用法についての解説があります。
私のような「言葉」を使いこなすことを生業とする身としては、こういった辞書の「用法解説」や類語辞典などは、非常に役立つものとなります。

[用法]だます・[用法]あざむく――「友人をだます(欺く)」「銀行員をだまして(欺いて)大金を引き出す」など、うそを信じさせる意では、相通じて用いられる。◇「だます」は「うまいことを言ってだます」のように、うそを本当と思い込ませる行為に重点があるが、「欺く」は「誓い合った恋人を欺く結果になった」のように、信頼に反する行動に対して用いられる傾向がある。また、「だます」は口頭語、「あざむく」は文章語といえる。
(デジタル大辞泉)

このように、
「騙す」は嘘をつくことに主軸を置いています。
「欺く」は信義に反することで、「裏切る」ことに主軸を置いています。

こんなニュースがありました。

マルチ大手に業務停止命令=「がんに効く」と虚偽説明―消費者庁

「がんに効く」などと虚偽の説明をし、マルチ商法(連鎖販売取引)の会員登録を迫ったなどとして、消費者庁は9日、特定商取引法違反(不実告知など)で、健康食品販売「ナチュラリープラス」(東京都港区)に対し、10日から9カ月間の新規勧誘などの業務停止を命じた。

時事通信 3月9日(水)19時59分配信

さて、これは「騙す」でしょうか。「欺く」でしょうか。
上記ニュースによると、「虚偽の説明」とあるので、これは「騙す」ことに入るでしょう。
本当にがんに効くかどうかはわかりません。その健康食品でがんが治るかもしれないし、治らないかもしれません。
ただ、少なくとも医師でもないのに「がんに効く」と断言する権限はない以上、「虚偽」と言えるでしょう。

またこんなニュースもありました。

四谷学院CM「偏差値29でも北大医学部に」が炎上 生徒は「偏差値74」東大寺学園出身だった

偏差値29の学生でも、北海道大学医学部に合格できる――。大学受験予備校の四谷学院のCMで、低偏差値からの「大逆転劇」のような切り口で紹介されている生徒が、実は全国屈指の名門進学高校「東大寺学園」の出身だった。こんな指摘がツイッターに登場し、「偏差値詐欺みたい」などと炎上状態になっている。
J-CASTニュース 3月7日(月)20時21分配信

さて、これは「騙す」でしょうか。「欺く」でしょうか。
ここで狡猾だと言えるのは、「嘘をついていない」事にあります。
なぜなら、実際に「名門校の校内偏差値が29だった」という事実が実際にあったからです。
嘘はついていないのです。でも、それは真実でしょうか。
このような広告を「欺く」とでも言うのでしょう。

嘘はついていなくても、「欺く」ことは許されません。

このような広告が横行するから、人は広告を信じなくなるのです。
だからこそ、広告を信じてもらうための努力が必要になるのです。

そして、イタチごっこが始まります。

広告に信ぴょう性を出そうと、公的機関の証明や権威を用います。
これがマーケティングの定石です。

例えば、ある機器の性能を第三者機関に検査してもらい、検査結果を広告に載せて、その性能をアピールするとします。
昔は、それで良かったのかもしれません。

ですが、このような騙したり欺いたりする広告やセールスが横行することで、
「第三者機関に、いくら包んだの?」
と思う人も出てきます。

そして、その第三者機関を証明する第三者機関が登場し…その第三者機関をさらに証明する第三者機関が…となりかねません。ますます広告に対する不信感が積み重なっていきます。

今のSNS全盛時代に置いて、
「騙す」
ことも
「欺く」
ことも現実的ではありません。
非常にリスクが高まります。今回の後者の例のように、Twitterで発覚してしまいます。
1日で5000リツイートを超える拡散ぶりです。

それだけ、この「欺き」に対する怒りが深いのでしょう。
そして…それ以上に、悲しみや嘆きがそこに込められているように感じます。

今回は、「騙す」と「欺く」を使い分けて説明しました。
ただ、結局のところ、以前も書いたとおり
「コミュニケーションは伝わったことが伝えたこと」
なのです。

その広告を見た人が
「騙された」
と思ったら、騙したつもりはなくても、
「相手がそれを見て騙されたと感じた」
ということ自体は事実であり、覆しようがないのです。

人は広告をなかなか信じません。
当たり前です。騙したり欺いたりする人がいるからです。
そういった広告で嫌な思いを何度もしたからです。

顧客を騙したり欺いてお金を払わせ、相手に嫌な思いをさせる。
顧客に信頼され喜んでもらって、何度もリピートしてもらう。

どちらがビジネスとして適しているのか。
それは言うまでもないことです。

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